ジュネーヴで開かれた世界最大級の時計見本市を終えて、新たに見えてきた潮流とは？ 時計連載でもお馴染みの二人がマニアックな対談をお届けする。
時計についても一家言もつ人気スタイリスト。自身もパテック フィリップをはじめアンティークウォッチを所有するが、現行品も気になっている。
時計の機構や技術にも精通しており、スイス時計取材歴は20年近くに。時計は新しいほうが好きで結構ミーハー。
BVLGARI｜オクト フィニッシモ ウルトラ COSC
可能な限りパーツを重ねず配置して、驚異の1.7㎜厚を実現。手巻き。Ti。ケース径40㎜。世界限定20本。9月発売予定。価格要問い合わせ／ブルガリ（ブルガリ ジャパン）
IWC｜ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー
ケース径や厚みを大きく変えずにグレゴリオ暦のうるう年のルールを機械的に表現できるよう、従来の永久カレンダーをアップグレードした。自動巻き。Pt。ケース径44.4㎜。価格要問い合わせ／IWC
PIAGET｜アルティプラノ アルティメート コンセプト トゥールビヨン
1957年に発表したCal.9Pのケース厚2㎜にこだわった。手巻き。コバルト合金。ケース径41.5㎜。世界限定15本。価格未定／ピアジェ（ピアジェ コンタクトセンター）
VACHERON CONSTANTIN｜レ・キャビノティエ ザ・バークレー グランドコンプリケーション
アメリカのコレクターがオーダーし、11年かけて完成させた。手巻き。18KWG。ケース径98㎜。ケース厚50.55㎜。ユニークピース／ヴァシュロン・コンスタンタン
極薄に超複雑機構あくなき限界への挑戦
篠田 ハイコンプリケーションは時計好きの憧れでもある。どんな機構も当初はより便利に、より実用的にということで開発されましたが、最近は限界を超えつつある。
小林 完全にオーバースペックですよね。例えば極薄の時計とか。
篠田 ケースは薄いほうがエレガントであることは事実で、高度な技術も求められますが、ブルガリの「オクト フィニッシモ ウルトラ COSC」はなんと1.7㎜厚ですから。
小林 もはや触れるのも怖い薄さ。
篠田 しかも実用性も考えて、高精度の証しであるCOSC認定クロノメーターも取得済みです。その対抗馬が、薄型ウォッチの名門であるピアジェ「アルティプラノ アルティメート コンセプト トゥールビヨン」。ケース厚は2㎜ですが、フライングトゥールビヨンを搭載していますからね。
小林 本来、トゥールビヨンってパーツを重ねた立体構造ですよね。それを2㎜のケースに収めるなんて、もはや想像できない。
篠田 想像できないという点では、ヴァシュロン・コンスタンタンの「レ・キャビノティエ・ザ・バークレー・グランドコンプリケーション」もかなり強烈ですよ。
小林 この時計はニュースで見ました。世界で最も複雑な時計ですよね。えっと、63個の複雑機能が入っていて、中国暦の永久カレンダーが搭載されている…と説明を読んでも理解が及ばない。でもこういうのってやっぱりロマンがあるんだよなあ。
篠田 人智を超えたものですからね。王侯貴族や富裕層がハイコンプリケーションウォッチを所有したのも、結局のところ、太陽と月から導き出された時間という概念を、時計という形にして所有したいということ。まさにロマンです。IWCの「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」なんて、千年先までのうるう年の有無を把握してカレンダーの正確さを追求している。ムーンフェイズの誤差は4500万年に1日だけですから。
小林 ……すさまじい世界ですね。
