40歳男子のたしなみとして、知ってて当然の時計の知識。聞きづらすぎる素朴な疑問を本誌時計連載でお馴染みの時計ジャーナリスト・篠田さんにぶつけてみた!
本誌連載をはじめ40以上の媒体で時計記事を担当。もっと知りたくなったら篠田さんの著書『教養としての腕時計選び』(光文社新書)を!
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Q6|1本目のブランドはどう選ぶべき?
A|感情移入できる物語のあるブランドがおすすめ
自分に合うブランドを見つけるためには、まず大きな時計店に行くのがいいと思います。そこでたくさんの本物に触れて、こういうものが好きという感覚を養ってみてください。短時間に多くの情報に触れると、自然といいものだけ覚えているものです。その中で、自分が感情移入できるようなストーリーをもったブランドのものを手に入れるのがいいんじゃないでしょうか。例えば、若手の経営者の方なら新しいブランドの時計を手に入れてともに切磋琢磨していこうと決意するような。昔は手頃な時計から入って、徐々にステップアップするのが一般的だったんですけど、最近はいきなりいいものを買う人が増えているそうです。オタク的な視点でなく、ファッションの文脈で楽しむ人が増えたからでしょうね。値段もどんどん上がっている時代ですし、せっかくなら常にいいものに目を触れさせて審美眼を磨くのもおすすめです。
Q7|クオーツと比べた機械式のメリットとは?
A|機械式は、直せば100年でも200年でも使える
クオーツは止まらず正確で、時間を知るのにはとてもいいんですが、電子回路なので必ず劣化します。そして技術の進化が速いので、同じ電池が供給されず直せなくなるなんてことも起こるんです。一方機械式は、歯車やバネという400年以上前からある技術で作っているので、直せば100年でも200年でも使えるというのがメリットです。機械式の中でも、自動巻きは毎日つけることで回転ローターが巻き上がり、ぜんまいを巻く必要がないというのが長所。手巻きだとローターがないので内部構造がきれいに見えるという点が魅力的ですね。いずれも100を超えるパーツが組み合って動いているので、定期的にムーブメントを分解し、超音波洗浄機でパーツを掃除し、再注油しながら組み立てる「オーバーホール」が必要です。
Q8|ヴィンテージを買うときに気をつけることは?
A|信頼できるお店で購入すること
本物であるという保証の問題と、修理できるという保障の問題が大きいです。その二つをクリアするには、とにかくきちんとしたところで買うということが絶対条件。そのお店がメンテナンスや修理を請け負ってくれるのであればひと安心です。オーバーホールも現行モデルよりきっちりと行う必要があります。UOMO読者にお馴染みの江口時計店(ECW SHOTO)さんはその点では心配ないでしょう。あとは汗や手洗いといったレベルの水も気をつけなければいけないものが多いので、繊細に接するという覚悟が必要。こういった手間を避けたいなら「復刻モデル」に注目するのもおすすめです。
Q9|お店で試着するときに見るべきポイントを教えてください
A|尺骨頭まわりにのせてしっくりくるか、全身のバランスはいいか
尺骨頭(手首の出っぱった骨)の上にのせ、その骨の上を回るようなイメージでつけましょう。そのときに浮いていないか、しっくりくるかどうかの見極めが大切です。靴などと一緒で、少しでも合わないと思うものはつけなくなるので慎重に。また、ファッションに合わせることを考えるとその時計に合わせたい服でショップへ行くこと、姿見で全身のバランスを確認するのも必須です。径の大きさだけでなく、ケースの厚みも大切。袖口に引っかからないかきちんとチェックを。
Q10|日常的にしたほうがいい手入れは?
A|汗とホコリがサビの原因。綿棒とクリーナーで定期的なケアを
メタルバンドの場合、汗とホコリがつくとサビやすくなるので、ピュリファイタイムというクリーナーを掃除用の細い綿棒につけて汚れを拭き取りましょう。週1回から月1回くらいの頻度でやるのがおすすめ。レザーストラップの場合、汗を拭き取るのはもちろんですが毎日使わないというのも大事。1日使ったら1日休ませるだけで持ちが変わります。傷んできたらストラップをつけ替えても。その際、ベルトの内側にアンチスウェットという汗が染み込みづらい素材にカスタムするとお手入れがラクになります。