
Gショックといえば角形ケースを想像する人も多いと思うが、オンオフ使えるモデルとして大人からも人気を集めているのが八角形ケースの「2100シリーズ」、通称カシオークだ。まずは腕時計ジャーナリストの篠田哲生が人気の理由と魅力を解説する。
Gショックの歴史とデザインの偉業
おそらく、UOMOの読者の中でGショックを所有してこなかった人はいないだろう。1983年にデビューした初代Gショック「DW-5000C」は、世界で初めて“耐衝撃性能”を特徴とした時計として生まれ、まずは軍人やSWAT隊員、警察官たちに愛された。そしてその特徴的なデザインや外装のカラー展開がファッションやスポーツ、音楽と融合し、ユースカルチャーの象徴として、今では世界的な人気ブランドとなった。

Gショックには多くのバリエーションがあるが、その象徴となるのは、やはり初代Gショックで確立した“角形ケース”のモデルたちだろう。初代Gショックのデザインは、2023年に時計界で初の立体商標登録となった。立体商標登録とはヤクルトの容器やスーパーカブのように、その立体造形自体が商標登録になるということ。それだけアイコニックな存在なのだ。
角形Gショックには初代を継承する「5000シリーズ」と後継機である「5600シリーズ」があり、そのどちらも大人からの人気が根強い。しかしその座を脅かす脅威の新人が表れた。それが2019年にデビューを果たした「2100シリーズ」である。
角形ケースの比率を変えて生まれた八角形ケース

Gショックは常に斬新なデザインを生み出してきた。進化こそがGショックのあるべき姿なのだ。しかし「2100シリーズ」は、そこに“歴史”というエッセンスを加えた。このモデルを担当した若手デザイナーは、マスターピースたちを融合し、現代的に進化させることを目指した。
ケースのデザインは、初代Gショックである「DW-5000C」の角形ケースがベース。実はこのモデルは“角型”と言いつつ四隅がカットされた変形の八角形であり、その縦横比率を変えたのだ。そしてモジュールには、1989年にデビューしたアナログGショックの原点である「AW-500」の流れをくむデジアナ式を採用。このアナログ針をバランスよく収まるサイズへとケースのバランスを整えた結果、特徴的な八角形ケースが生まれたのだ。
「2100シリーズ」は2019年のデビューだが、マスターピースのDNAを取り入れている。歴史の中から生まれた時計だからこそ、あっという間に人気シリーズへと駆け上ったのだ。
豊富なバリエーションと着用しやすいサイズ感が人気

マスターピースのDNAを継承した「2100シリーズ」だが、そこからの戦略は華やかだった。Gショックらしいブラック系のシンプル配色はもちろんのこと、カラフル系やモノトーン系といった豊富なカラー展開を揃え、さらには小径モデルやフルメタルモデルも用意。ベーシックな電池式だけでなく、ソーラー充電モデルやスマートフォンと連動するモバイルリンク機能など、現代的な進化を遂げたモデルもある。
とにかくバリエーションが豊富に揃い、価格もこなれているため気軽に購入できるというのも人気の理由だ。

さらに、「2100シリーズ」のために薄型モジュールを開発し、新しい耐衝撃構造によって薄型ケースを追求。Gショックのデジアナモデルとしてはかなり薄いケースを完成させた。
たとえタフなGショックであっても、機械式時計同様、シンプルで小ぶりなサイズを選びたいという人は少なくないだろう。その希望を「2100シリーズ」は叶えてくれる。着用のしやすいサイズ感も人気を集める理由である。
最高峰のMR-Gにも登場し、大人のGショックファンを鷲掴み
Gショックの歴史を継承するデザインと豊富なラインナップを揃える「2100シリーズ」は、あっという間に人気を集めた。しかしカシオは追撃の手を緩めない。なんと最高峰のMR-Gからも「2100シリーズ」が誕生したのだ。

MR-Gとは、最上級の仕上げと素材、デザインや特別な耐衝撃性能を誇るGショックの最高峰コレクションのこと。近年は「5000シリーズ」や「フロッグマン」といったマスターピースが加わるようになり、大人になったGショックファンたちを喜ばせている。
といってもそれは数十年という歴史を重ね、根強いファン層を醸成してきたモデルだけが達することができる特別なポジション。紅白歌合戦でいうところのトリを務める格がなければ、MR-Gになることはできなかった。
しかし「2100シリーズ」はデビューから5年目の2024年で、早くも「MRG-B2100B」がデビューする。それは「2100シリーズ」がこれからのGショックを支えていく存在であるという証明でもあるのだ。

「MRG-B2100B」は、耐衝撃性能を高めつつ、良い意味で”普通の高級時計“に仕上げている。アナログウォッチとしての価値を高めるために、表示は時分秒針とインジケーターのみに絞りつつ、スマートフォンと連動させることで機能性も充実。ケースは27のパーツで構成されているため、細部への磨き込みも美しい。
MR-Gでは日本の匠の技術とテクノロジーの融合もテーマになっており、日本らしいデザインや仕上げを取り入れるのも特徴。「MRG-B2100B」では、ダイヤルの装飾に神社仏閣などで用いられる「木組」の構造美を取り入れ、日本の美意識をさり気なく感じさせる。

この仕上がりレベルであれば、スーツの腕元に収まっていても全く違和感はないし、カジュアルなアイテムと合わせて、そのまま郊外へと車を走らせても問題はないだろう。オンとオフを軽やかにクロスオーバーするタフなラグジュアリーウォッチ。それが「MRG-B2100B」なのだ。
Gショックは、アクティブな休日のための時計だ。しかし「2100シリーズ」の誕生によって、デザインに物語性が加わり、サイズ感によって着用感が高まり、MR-G化によってラグジュアリースポーツウォッチとしての価値も加わった。「2100シリーズ」は、Gショックの枠を広げ、これから進むべき方向を示すモデルなのである。

時計の機構や技術にも精通しており、スイス時計取材歴は20年近くに。時計は新しいほうが好きで結構ミーハー。
服のプロが教える「2100シリーズ」の着こなし方
ファッションの視点から見ると「2100シリーズ」はどう映るのか。スタイリストの小林新に、人気の理由と40代男子がおしゃれに着こなす秘訣を聞いた。
正直言って、昔のG-SHOCKには「タフでカジュアル」のイメージが強かったんです。でもこの2100シリーズを見たとき、薄型化されていて重さやゴツさを感じさせないところに惹かれました。
ビジネスシーンにも馴染むアナログ針や八角形のフェイスデザインは、いわゆる“ラグスポ(ラグジュアリースポーツ)”の潮流も感じさせるから、大人のコーディネートにも無理なくハマるんです。

広告や雑誌で活躍。高校生時代にG-SHOCKを初購入。以来、時計に魅せられて30代以降はアンティークや機械式にも深く傾倒。