日本を代表する高級時計、グランドセイコー。手に入れたいが、どれを選べばいいか悩んでいるという初心者に向けて、UOMO本誌連載でもおなじみの時計ライター、篠田哲生さんが「歴史」「メカニズム」「デザイン」「メイド イン ジャパン」の4つのキーワードで選び方を解説。
「歴史」をキーワードに選ぶ3本
Grand Seiko|SBGW259 クラシックでエレガントな初代モデルの復刻
「グランドセイコーが60周年を迎えた2020年に、初代モデルを定番として復刻しました。ケース径が35mmから38mmになるなどマイナーチェンジはありますが、針やインデックスのカット、ロゴは当時のデザインのまま。今見ても美しい、タイムレスな魅力があります。グランドセイコーのブランドカラー、ネイビーの文字盤やベルトがモダンさを添えています」(篠田)
初代モデルを現在の最高の技術と進化したデザインでブラッシュアップ。ケースには傷がつきにくく、軽量なブリリアントハードチタン素材を採用。裏蓋はサファイアガラスによるシースルーバックで、現代ならではのアレンジを施している。
ケース径38mm ブリリアントハードチタン 手巻き
Grand Seiko|SBGH277 超高精度を普遍的なデザインで魅せる美徳時計
「グランドセイコーが『ニューシャテル天文台クロノメーター・コンクール』でクリアした高精度技術は、その後も脈々と受け継がれ、スイス・クロノメーター規格よりも厳しい自社規格を設けるまでに発展しました。その歴史をわかりやすく投影したモデルがこちら。デザインはシンプルですが、文字盤6時位置に『AUTOMATIC HI-BEAT 36000』の文字が誇らしげに記されています。車に例えるとV12エンジンを搭載しているような超ハイスペック。なのに燃費がいいという、バランスも抜群の時計です」(篠田)
美しく磨き上げられたケース、伝統を感じるシンプルな文字盤が「燦然と輝く腕時計」というグランドセイコーのデザイン哲学を体現。毎時36,000振動(毎秒10振動)という高速振動は、外的影響を受けにくく、安定した精度をキープできるのが特徴。最大巻上時約55時間持続。
ケース径40mm ステンレススチール 自動巻き
Grand Seiko|SLGH005 格式ある賞に輝いた全方向美しい高精度ウォッチ
「2001年にスタートしたジュネーブ時計グランプリ(GPHG=Grand Prix d‘Horlogerie de Genève)は、新作ウォッチを時計のスペシャリストが審査する時計業界の一大イベント。SLGH005は時計がつくられている岩手県の風景から得たインスピレーションを、文字盤だけでなくムーブメントにも落とし込んだ情緒あふれるデザインが評価されました」(篠田)
文字盤は白樺林に着想した立体的な型打模様、ムーブメントには雫石川の流れをイメージしたストライプ模様をあしらった。四季や自然をデザインに落とし込む、グランドセイコーの哲学を反映した今作は、毎時36,000振動のハイビートで最大巻上時には約80時間駆動するハイスペック。 独自の水平輪列構造によって薄型化も実現している。
ケース径40m ステンレススチール 自動巻き
【メイド イン ジャパン】をキーワードに選ぶ3本
Grand Seiko|SBGJ235 メイド イン 雫石を象徴する「岩手山パターン」
「雄大な岩手山の山肌を表現した『岩手山パターン』をブルーダイヤルに繊細な型押しで表現しています。肉眼では細部までは見えませんが拡大鏡で見ると、本当に月光を照り返す冬山のように見えるんですよ。匠の手仕事ならではのデザインとして、高い評価を得ています」(篠田)
44GSをベースにしたオーセンティックなセイコースタイルのGMTモデル。深いブルーの文字盤と歪みのない鏡面仕上げのケースのコントラストが美しい。
ケース径40mm ステンレススチール 自動巻き
Grand Seiko|SBGY007 諏訪の神秘的風物「御神渡り」をイメージ
「諏訪湖の御神渡りをイメージさせるようなアイスブルーの文字盤に氷の山脈のような凹凸が、単純な凸凹ではなく情緒豊かに表現されています。セイコースタイルは踏襲しつつも、インデックスや針はややほっそりと。ケースも小ぶりでエレガントなルックスに仕上がっています」(篠田)
クロコダイルのネイビーレザーバンドにもクラス感が漂う。約72時間の持続時間を持つ手巻スプリングドライブキャリバーを搭載。シースルーバックから、ヘアライン仕上げの美しいムーブメントを見ることもできる。
ケース径38.5mm ステンレススチール スプリングドライブ
Grand Seiko|SBGA443 春分の後の桜を表現した二十四節気モデル「花筏」
「ピンク一色ではなくグレイッシュに見える部分もある、複雑な紋様の文字盤が印象的です。アメリカでCherry Blossomとして発売したところ大好評で、日本でも発売になったという逆輸入的なモデル。日本では単純に桜でなく、『花筏(はないかだ)』という物語性のある名称になり、春分の頃の儚い桜の美しさが見事に表れています」(篠田)
「花筏」は春分の頃に桜が散って水面に落ち、渦を巻いて浮き流れる様子。1967年に発売されたグランドセイコー初の自動巻き機械式モデル「62GS」の、ベゼル(ガラス縁)のない構造を生かしつつモダンにアレンジしたデザイン。
ケース径40mm ブライトチタン スプリングドライブ
【デザイン】をキーワードに選ぶ3本
Grand Seiko|SBGJ255 セイコースタイルを継承する55周年記念モデル
「セイコースタイルの礎となった44GSの55周年記念モデルとして、2021年末に発表されたSBGJ255。多面カットのインデックスや時計針、歪みのないキラリとした鏡面仕上げのベゼルなどシャープな面構成が際立つ、王道のスタイルです。44GSのデザインは2014年に発表されたメカニカルハイビートGMTモデルが、ジュネーブ時計グランプリで部門賞を受賞したことでも世界的に有名になりました」(篠田)
2014年の受賞モデルをベースにし、ケースやバンドの素材を軽くて傷がつきにくいブライトチタンにアップグレード。グランドセイコーらしいホワイトカラーに、ルミブライト(高輝度蓄光塗料)を塗布したブルースチール製のGMT針がアクセント。
ケース径40mm ブライトチタン 自動巻き
Grand Seiko|SBGC203 セイコーのレガシーが息づく独創的クロノグラフ
「クロノグラフは人気が高いので各社から出ていますが、この大きなプッシュボタンによってひと目でグランドセイコーとわかるデザインは希少です。縦に並べられたインダイヤルの効果も加わり、3時位置を上にするとストップウォッチをイメージしたデザインだということがわかります。ボタンの押し感も重すぎず軽すぎない、絶妙なクリック感に仕上げているというニッチな部分もグランドセイコーらしい」(篠田)
セイコー独自の第三の機構、スプリングドライブを搭載した信頼性の高いクロノグラフウォッチ。時刻表示はもちろん、ストップウォッチ針もなめらかなスイープ運針で高精度。GMT機能が付き、最大巻上時の持続時間は72時間(3日間)。
ケース径43.5mm ステンレススチール スプリングドライブ
Grand Seiko|SLGA009 威風堂々としたエボリューション9の最新作
「鏡面とヘアライン仕上げのコンビによる陰のグラデーションが美しい『エボリューション9』。ブレスレットが太めの、どっしり見えるデザインが好みの人にもおすすめです。裏蓋の厚さを極限まで減らし、ラグ幅を広めにすることでアクティブでありながら安定感のある着け心地を実現しました。丁寧に作りこんだ型打ちの白樺ダイヤルやシースルーバックも見事です」(篠田)
最新のスプリングドライブムーブメント、キャリバー9RA2を搭載し、最大巻上時には約120時間(5日間)稼働。パワーリザーブインジケーターを裏側に配すことで、針の取付位置を下げ、ケースの薄型化にも成功した。
ケース径40mm ステンレススチール スプリングドライブ
【メカニズム】をキーワードに選ぶ3本
Grand Seiko|SBGJ203 グランドセイコーの王道デザインは機械式
「グランドセイコーといえばダイヤカットを採用した美しくて見やすい、太い時分針。それを動かすのはやはり機械式です。このSBGJ203は、1967年に発売された『44GS』を踏襲するデザインや、精度への誇りを象徴する『AUTOMATIC HI-BEAT 36000』の文字があしらわれ、GMT機能がついたキャリバー9S86を搭載しています。機械式時計は、時計文化の伝統がしっかり入っているので王者の貫禄をまとうことができます」(篠田)
グランドセイコー独自のデザイン理念を現代的に落とし込んだメタルバンドウォッチ。赤いGMT針によって、時間帯の異なるもう1つの地域の時刻が表示されるGMT機能を搭載。歪みのない鏡面、繊細な文字盤の仕上げにもハイクラス感が漂う機械式時計。
ケース径40mm ステンレススチール 自動巻き
Grand Seiko|SBGX347 エレガントなルックスが叶うクオーツ式
「クオーツ式はムーブメントを小さくできるので、エレガントなデザインが可能になります。それから巻いたり着けたりしなくても、電池がある限り動くので手間がかかりません。SBGX347はケース径34mmのミドルサイズで、Grand Seiko Elegance Collectionの名の通り、クラシックで美しく静かな佇まいが魅力。毎日時計をつけない方や、小さめのケースが好みならクオーツ式がおすすめです」(篠田)
細いベゼルやかん足(ケースとバンドをつなぐ部分)にボックス型のガラスを組み合わせたタイムレスなデザイン。独特の仕上げによってきらめく白いダイヤルが、エレガントなルックスを際立てる。
ケース径34mm ステンレススチール 電池式クオーツ
Grand Seiko|SBGA211 新しい技術をまといたいならスプリングドライブ
「機械式とクオーツ式の両方のメリットを合わせ持つスプリングドライブは、新しい技術を知りたいという好奇心旺盛な方に向いています。クオーツ式はカチカチと1秒ごとに針が動くステップ運針ですが、スプリングドライブは、スムーズに針が動くスイープ運針。電子制御されているので、流れるように動きます。左下にパワーリザーブ表示も採用されたSBGA211は、雪白という独特の文字盤を備えたグランドセイコーらしいルックスの人気モデルです」(篠田)
純白のダイヤルにブルースチールの秒針がアクセント。ダイヤルは特殊な銀メッキ加工によって純白を表現、針もメッキでなく焼き入れして着色するなどグランドセイコーらしいこだわりの製法で仕上げられている。ステンレススチールに比べて3割ほど軽い、ブライトチタンの心地よい着用感も魅力。
ケース径41mm ブライトチタンケース スプリングドライブ