モノとして美しく感じるかどうかが大事
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「今から10年ほど前ですが、自分が所属する事務所の社長が私物のカラトラバを見せてくれたんです。その美しさに感動して『いつか自分も買えたら…』と思っていました。この“3919j”は1991年から92年頃に製造されたモデルで、社長に見せてもらってから10年越しの思いでやっと手に入れることができました。カラトラバはドレスウォッチの最高位なので、カジュアルな着こなしが多い自分とのギャップを楽しめるのが魅力。もちろんモノとして見ても、シンプルを極めたデザインが心底美しいです」

「モノを選ぶ際は、その歴史や存在する意味を考えるのが好きです。カラトラバはとにかく見ていて美しいし、着けても佇まいが素晴らしい。自分はかつて『大人になったら時間を大切にするために時計を着けなさい』ととある方に教えられたことがあって、そこから時計を着けるようになりました。時計には実用的側面がありますが、ロマンもあるわけで、そうした理由で着こなしには必ず時計を入れるようにしています」
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「トゥールビヨンや永久カレンダーといった複雑機構の時計は持っていませんが、これだけ小さなケースの中に沢山の細かい歯車が入っていて、それが自動で動くって単純に技術としてスゴい。大学生ぐらいのときに、NHKの『独立時計師たちの小宇宙 ~スイス・超複雑時計の世界~』という番組を見てから時計が好きになったんです。とにかく、お金に糸目をつけないならフィリップ・デュフォー氏が作った“シンプリシティ”は、いつかは所有したい。あとはパテック・フィリップでも、アクアノートやノーチラスなどを数本買った後におすすめされるようなユニークピースを持ってみたいですね(笑)」
本誌でも「時計と手土産の“おかしな”関係」を連載中の、時計にも一家言持つスタイリスト。時計のコレクションもカラトラバのみならず、カルティエのサントス、ロレックスのデイトジャスト、アンティークのIWCなど錚々たるラインナップ。
Photos: Yumi Yamasaki
Text: Yasuyuki Ushijima