自分が時計に求める条件がすべて詰まっています
「10年前ほど前にe-bayで購入したのがこのデラックス。実はファッションの原体験がモッズなんです。基本的にイギリスびいきで、特に20代前半はその意識が強かった。ならば時計も英国製で、ということで色々調べたなかで、この「Made in England」のスミスにたどり着いたんです。この個体は1950年代後半ぐらいのモデル。自分はスモールセコンドが大好きなので、スモセコ付きでデイトがなくて金針…という仕様はまさにドンズバ。おそらくリダン(修理時に文字盤を変えること)して風防も交換していると思いますが、かなりキレイな状態だったので思いきって落札しました。スミスは英国車の計器類なども作っていたメーカーで、景気がいい頃はイギリスのジュエラーにも時計を作っていたそうなのですが、1970年代に入ってから残念ながら時計の生産を中止してしまいました」
「このモデルは手巻きですが、特にムーブメントにはこだわりがありません。はじめは巻くのが怖かったですが、最近は電車を待っているときなどに巻いています(笑)。自分は手首が細いので、ケースがあまり大きくないことが、欲しくなる時計の条件。あとはスモールセコンドがあって、デイトはないほうがいい。デイトは小さな時計だとかなり目立つし、何日かつけていないと日付も狂いますよね。ロレックスのように逆回しできればいいですが、古い時計の逆回しはご法度なので。このデラックスは2~3日に1回は着けるほど使用頻度が高いですね。元は革のベルトが付いていましたが、最近は銀座のアンティークショップで購入した古いNATOベルトがお気に入りです」
「3~4年に一度オーバーホールに出しています。スミスは得意としないお店もあるので専門店に出していましたが、最近は銀座の『アドヴィンテージ』というお店にメンテンナンスを依頼しています。着る服はカジュアルもドレスも昔から変わっていないですが、昔からデラックスはどちらの装いにも寄り添ってくれます。そのような懐の広さでいくと、カルティエのサンチュールはかなりいいと思いますね。新たに何かを買うとしても、ケースが金無垢のような、ややジュエリー要素のある時計が自分には似合うと思っています」
1989年、大阪府生まれ。大阪で半世紀以上の歴史を誇る「ファイブワンファクトリー」の直営店でプレス業務などを経て現職。“セビロ屋”を自称するドレスマンでありながら、モッズやアメカジなど幅広いジャンルに精通。スミスはデラックスに加え「1215」も所有している。
Photos: Takahiro Idenoshita
Text: Yasuyuki Ushijima