「イノシシ革の靴」というパワーワード

紳士靴の世界では、シャープな造形も、ずんぐりとした不格好さも同様に讃えられる。後者の代表格といえば、オールデン。ラストにもよるけれど、丸っこくてずん胴であることに愛着をもつファンは多い。
僕が最初にこのエンツォ・ボナフェのビットローファーを見たときは「ボナフェにしてはずんぐりしてる」という第一印象だった。聞けば、ペッカリー(イノシシ)の肉厚な革を使った別注だという。しかし横から見ると、マッケイ製法とグッドイヤー製法を巧みに使い分けたボナフェ独自のシェイプと、やや高めのヒールが美しい。
手袋ならまだしも、革靴にペッカリーなんて聞いたことがなかったので、その贅沢な発想にも惹かれて購入。やはりかなり異質な存在感なのだろう。「グッチですか?」と聞かれたことは一度もない。



編集
西坂和浩
クルマと時計担当。幼少期からのクルマ好きで、大学時代は自動車部に所属。ウェブでは「文化系ネオクラシック車と30人の男たち」も手掛けた。愛車はアルファロメオの「ジュリア」。クルマはイタリア車好き、ワードローブはカジュアルなフレンチスタイルが好み。猫舌のため一年中、アイスコーヒー派。
Movie:Mitsuo Kijima
Stylist:Rui Goto
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Editor Shibutsu