味も旅も、思い出が蘇る
グリーンで少し深さがあり、八寸よりひと回り大きいサイズ。我が家の皿の中でもっとも登場回数が多いもののひとつ。最初はもっぱらクスクスなど中東っぽい料理に使っていたが、深さがあるので麻婆豆腐や八宝菜などとろみがある料理にもぴったり。緑があることでポットローストやガレットなど、色味が単調なものもおいしそうに見せてくれる。みんなでシェアする大皿料理にもいいし、ひとりでアチャールをいろいろ載せて食べるスパイスカレーも映えさせる。ものすごい懐の深さ。もう皿全部これでいいかな?ってくらいの汎用性。
買ったのは、モロッコ・マラケシュ。モロッコは好きなものがありすぎる国だったが、その時8歳と4歳の子どもをひとりで連れていたため手がふさがっており、買い物は厳選していた。食器はこのお皿と小さなボウルをいくつか買ったのみで、この後に訪れたドバイやチェンマイでも慎重に運んでいた。
が、最後のフライトを待つバンコクの空港で、子どもがふざけていて割ったのだ。「何やってんのー!!!」怒り狂う私。すると「りょうこ?」と声をかけられた。振り向くと10数年ぶりに会う学生時代の友人だった。「声でわかったよ~」と笑う彼女。そんなこと、ある…?
日本に帰ってから、この皿を直したい一心で金継ぎを覚えた。使うたびにいろんな記憶が蘇る、思い出の1枚です。
世界を旅することを愛し、3人の息子たちとともに、これまでに19カ国を訪問。メキシコ、トルコ、モロッコが特にお気に入り。海外の旅行先では必ず料理教室に参加し、帰国後は各国の料理を自宅で再現している。旅好きながらもインドア派で、家に籠もって洋裁やDIYをするのも大好き。
Movie:Mitsuo Kijima
Stylist:Rui Goto