大学の試験で、運命の時計との出会い
大学一年生のときの前期試験。その日の会場は時計がないとのことで、自前で用意する必要があった。当時は腕時計をしていなかったので家族のものを借りようと自宅を物色していると、父親がいつも鍵やら財布やら置いていた一角に腕時計が残されていたので、これ幸いと拝借。父は海外出張中で、出張に持っていってないということは、大した時計ではないのだろうと思っていた。
2週間ほど経ったある日、帰国した父が何やら騒いでいた。「時計がない」、と。そうだ、試験で使った後、そのままバッグの中に入れっぱなしにしてたんだっけ。ごめんごめん、と時計を差し出すと、父は脱力。この時初めて、「PATEK PHILLIPE」という時計メーカーがあることを知ったのだった。
1994年、父が香港赴任中に現地で購入した「カラトラバ3520」は32mm径で極薄。イエローゴールドとダークブラウンのレザーベルトの相性もいい。昨年、半ば無理やり自分のものにさせてもらった。対外的には「親父の形見」ということにしているが、父は今も元気に生きています。
UOMOプリント版編集長
池田 誠
身に着けるモノの中では365日かけているメガネが一番大事だが、気分屋で服装には一貫性がなく、白髪に合えばなんでもいい。大阪府出身。お好み焼きと立ち飲みと電車と野球が好き。
Movie:Mitsuo Kijima
Stylist:Rui Goto
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Editor Shibutsu