考え抜かれた「7六歩」

将棋の初手として最も多いのは、角道を開ける「7六歩」と言われる。ではファッションショーの初手であるファーストルックはどうか。コレクションのテーマを象徴する服、ブランドのシグニチャー的スタイルなど、いくつも選択肢がある。でもそれがデザイナー自身にとって最後のショーだとしたら、最初のルックに何を選ぶ?
昨年6月、ドリス・ヴァン・ノッテン本人のラスト・ショーをパリで観た。自分もなんだかんだで各ブランドのコレクションを20年以上観続けているが、仕事仲間の間でドリスほど皆に愛され続けていたデザイナーはいないんじゃないだろうか。
引退についての感傷的な話はさておき、自分はショー当日、ファーストルックにどんな服が選ばれるのかに注目していた。大一番の初手をどう指すか。ショーが始まり長いランウェイを静かに歩いてきたのは、あえて奇をてらわない「7六歩」。このうえなく黒に近いダークネイビーのロングコートだった。
ドリス ヴァン ノッテン TEL:03-6778-7975

UOMOブランド統括
山崎貴之
ワードローブは、アウトドアやミリタリーものから唐突なハイブランドまで混ぜたもん勝ち。恒例「試着フェス®」発案者だが、ショップに行く暇を惜しみ、試着ゼロ状態で衝動的に通販しがち。好きなモノは、深夜の飲酒からの寝落ち。MT車の運転。スノーボードとキーボード。
Photo: Yoshio Kato
Stylist: Takeshi Toyoshima
Composition: Ai Hogami
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