レースで活躍する姿にひと目惚れ
ネオクラ車はどれも個性的だが、なかでも「イタフラ」と呼ばれるラテン系の伊&仏車はひと際クセが強い。今回紹介するアルファロメオ155 V6 2.5(1997年式)もそのひとつ。鋭い顔つきと、前後で高低差の激しい直線的なボディはまさに個性の塊。実用的なプロダクト然としたセダンを求めず、速く情熱的に走ることを追求したアルファロメオの姿勢が窺える。
雑誌や広告で活躍するヘアメイクの小嶋克佳さんがアルファロメオ 155 V6を手に入れたのは、2021年6月のこと。はじめてのクルマだった。
「自分の中では155以外に候補がなかったんです。幼少期だった90年代初頭は、ちょうどDTM(ドイツツーリングカー選手権)の全盛期だったので、魔改造された155のDTMマシンが戦う姿が子供ながら脳裏に焼きついていて。まさしくひと目惚れでした。でも、いきなり左ハンドルのマニュアルは戸惑いましたね(笑)」
そう、155はメルセデスの190E 2.5-16といった強豪を相手に、熾烈な争いを繰り広げたことでも知られている。市販モデルにも5MTしか設定がない、れっきとしたスポーツセダンだったのだ。
「父が大のクルマ好きで、私が幼い頃は’70年代のアルファロメオ・ジュリア2000GTVに乗っていました。DTMをテレビで観ていたこともそうですが、常にクルマを意識して育っていたのだと思います」
なるほど、筋金入りの“英才教育”を受けていたのだ。155の前は二輪に乗っていた小嶋さんだが、車種は大排気量のドゥカティだったというから、イタリアンスポーツとは縁が深い。
小嶋さんは、仕事でもプライベートでも155を使っている。小ぶりな見た目に反して、ハイデッキなリアのラゲッジスペースには、100ℓのキャリーケースとヘアメイクの道具が詰まった60ℓのボストンバッグ2つが余裕で入る。とはいえ、ひと昔前のラテン車は壊れる印象もあって、ファーストカーとするには不安を抱く人もいるかもしれない。しかし、きちんとメンテナンスされてきた個体であれば、さほど心配はいらないと小嶋さんは話す。
「実はこのクルマ、現車確認せずに専門店のHPだけを見て決めたんです。購入時の走行距離が4万キロ強と低走行だったことに加え、油脂類やタイミングベルトといった定期交換を要する箇所にはきちんと手を入れられたていて安心だったのが決め手でした。それだけに相場よりも割高でしたが、今のところ大きな故障もなく安心して乗れています。気になる部品供給も、年々減ってはいるものの、まだどうにかなるレベルです」
そして、当面は乗り続けたいと話してくれた。幼い頃から憧れていたクルマに乗れる幸せは大きいが、いま、小嶋さんは新たな価値観をもって155と向き合っている。
「ファッションや音楽、インテリアなどもそうですが、時間とともに成熟し続けるものが好きです。その点、155は発売当初はアヴァンギャルドで風変わりと言われていましたが、現代を生きる自分の目で見てみると、より新鮮で格好よく感じられたりする。こうした感性とも共鳴するから、このクルマが好きなのだと思います」
1988年東京都生まれ。ヘアメイクアップアーティストを志して修行後、2016年にフリーランスとして活動開始。現在は広告や雑誌を中心に活躍する。