2020.02.26

価格高騰の気配アリ。 今が狙いめのヴィンテージスニーカーは、懐かしのあのバッシュ【教えて! 東京スニーカー氏 #37】

“東京スニーカー氏”ことエディターの小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月イチ連載。今回のお題は「ヴィンテージスニーカー」について。

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1999年に日本企画で発売された通称“裏ダンク”。ぱっと見ではわかりにくいですがブラックとパープルのコンビで、この反転バージョンも発売されたことで話題になりました。少しレザーがはげていますがきれいにして履きたいと思います。スケーターやヒップホップとの結びつきが強いだけあって、ルーズなパンツに似合います。/私物



ミレニアムから2000年代半ばにかけては、ちょうど裏原宿のカルチャーが全盛期でした。この頃のファッションに大きな影響を受けているのが、40歳男子のUOMO世代ではないでしょうか。僕もその一人で、アメカジとモードとストリートが日本独特のセンスでうまく編集されていて、いろいろなスニーカーの履きこなしをデザイナーやお店のスタッフのこだわりを見て真似たものです。



当時のスニーカーといえば、ナイキのエアフォース 1かダンク。ともに’80年代を象徴するバッシュです。このどちらが好きかについての話を始めたら、ノンアルでも朝までいけます。コルテッツをはじめとする’70年代ランニングとは異なる耐久性や保護性を考えた切り替えによって、多くの配色が生まれました。そしてスケートや音楽などのサブカルチャーと結びついたことでスニーカーがアートになり、稀少なモデルにプレミアがつきました。昨今の過剰なスニーカーブームの原理原則は、この時期の2足が発端だと思っています。



歴史をおさらいするとエア フォース 1は1982年に初めてエアを搭載したバスケットボールシューズ。つまりナイキにとっては後世に伝えるべきモデルのため、定期的にフォーカスされています。一方のダンクにはエアが搭載されていません。誕生は1985年と後発でカレッジ向けに作られた廉価版シューズでした。



しかし薄いソールの履き心地がスケーターに着目されたり、ミシガン大学やケンタッキー大学、アリゾナ大学といった全米の強豪チームのカラーに合わせた派手な配色がヴィンテージ好きに注目されたりと、ファッションと結びついたことで、価値を高めてきました。



最近はほとんど復刻もされていませんが、セカンドマーケットに目をやると、当時のダンク人気が高まっているように感じます。僕も今が狙い目、と思ってオークションのウォッチリストに登録していたモデルが即決で落札されていたり、競り負ける機会が急に増えたのは、偶然ではないと思います。



ダッドシューズの原型となった’90年代後半のハイテクシューズ人気も、やや落ち着き始めています。となると「次はゼロ年代がくる」と予測する関係者も多いです。20年前のスニーカーを履くのはコンディション的に難しいですが、エアを搭載しないダンクはソールにポリウレタンを使わずにすむため、ゴムの硬化はあれどまだまだ履けます。ヤフオクやメルカリで若い頃を懐かしみながら買い物を楽しむのも一興です。



ちなみにダンクはハイカット派。これはオールスターの感覚に近いかも。レースをキュッと縛った細身のフォルムがたまりません。ワイドパンツの収まりもよく、今ならウールのスラックスや極太のジーンズに、ちょっと大人なニットを合わせたい。20年前のバッシュって、もはや立派なヴィンテージ。アメリカ製のコンバースが人気なように、ミレニアム世代のダンクの価値も化ける可能性を秘めています。

小澤匡行プロフィール画像
小澤匡行
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。スニーカー好きが高じて『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓。靴のサイズは28.5㎝。

Illustration:Yoshifumi Takeda
Photos,Composition&Text:Masayuki Ozawa
(2020年1月号掲載)

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