ラグジュアリーをカジュアルに装うストリートのトレンドは落ち着き、シンプルな中に、わかる人にはわかるさりげない品格が求められている。そんなウェアに合わせたいスニーカーもまた、見た目重視ではなく、ミニマムで語れるデザインが気分。エディター小澤匡行が、その基準を解説。
1MERRELL JUNGLE MOC EVO WOVEN 1TR
サステナブル素材を使用した名作ジャングル モックの進化系。編み込みが特徴。
スニーカー¥20,900/メレル(丸紅フットウェア)
光沢のあるナイロンブルゾンにワイドパンツの組み合わせ。スポーティな装いをアースカラーでアウトドアな雰囲気に一新したエルメスの最新ルックには、色もテイストも似た足元で調和させたい。価格帯を変えても世界観を崩さない。それが今時の選び方。ニットのアッパーには懐かしいクラフト感が宿る。
ブルゾン¥721,600・ニット¥234,300・パンツ¥140,800/エルメス(エルメスジャポン)
控えめで、語らずとも上質さが伝わってくること。それはテイストの話じゃなくて、もっと内面的というか「本来備わっているもの」ですよね。エルメスは、ずっとシンプルでも地味じゃないし、慎ましいのに華やか。今に始まったことじゃないのですが、初めて手にした25年前のエルメスは、その極みだったと思います。
スニーカーの「2000年デザイン」は重要なキーワードです。主張の強いハイテク化が落ち着き、環境との一体化を図るテクノロジーが注目された頃で、デザインがなかなかクラフトでした。近年の合理的なデザインとは違う奥行きがあり、注目されています。メレルのジャングル モックは、2000年デザインのアイコン。今季のエルメスのルックに、調和しませんか。
2MIZUNO WAVE MUJIN TL MID GTX
開発に4年もの歳月をかけたコラボレーション。ミシュランソールも機能的。
スニーカー¥31,900/ミズノ×ノンネイティブ(ノンネイティブ ショップ)
ナチュラルカラーのスウェットとパンツのリラックスしたルックスと上質な素材とのアンバランス感にこそ、現代におけるラグジュアリーの本質がある。トーンをいかに乱すことなく足元で色を追加するかが大人のスニーカー選びに必要なセンス。
コート¥614,900・ジャケット¥438,900・スウェット¥163,900・パンツ¥185,900/ザ・ロウ(ザ・ロウ・ジャパン)
クワイエットラグジュアリーという流行を牽引したのはザ・ロウですが、このテイストは今に始まったわけではなく、時代がザ・ロウの世界観やクオリティを求めるようになった、というのが本音でしょう。そしてそのトレンドは足元にも波及してきました。ただ何もない完全にミニマルなものより、飾り気のあるソリッドなデザインが気分です。ノンネイティブが手がけたミズノのゴアテックススニーカーは、まさにそれ。足型に沿ったニットアッパーはフィット感が高いのにブーツらしくて今っぽい。サイドゴアブーツを履いているような気分でスニーカーを楽しめます。これは一昨年発売された人気カラーの復刻。グレーともベージュとも言えないトーンが好みです。
3New Balance BB550
オリジナルは’80年代。タンブルレザーを使用し、レトロなムードを演出。
スニーカー¥18,700/ニューバランス(ニューバランスジャパンお客様相談室)
ミニマルなシャツを2枚重ねることでクラス感を静かに表現。白スニーカーもアクセントではなく、コーディネートを上品に落ち着かせる役割に。
シャツ¥35,200/オーラリー 中に着たシャツ¥37,950/マルセル ラサンス・ベルト¥28,600/ジェイアンドエムデヴィッドソン(ともにシップス インフォメーションセンター) パンツ¥53,900/エイトン(エイトン青山) ソックス/スタイリスト私物
ノームコア(究極の普通)がトレンドになった10年ほど前は、足元は白スニーカーが主役でした。よくも悪くも普通の称号を手に入れてしまった白スニーカーは、昨今の主張の強いY2Kとの相性はよろしくない。やはり色数を絞ったコーディネートに合わせてなんぼの一足だと思います。白スニの名品はたくさんありますが、今選ぶならニューバランスの「550」がおすすめです。人懐っこいフォルムが特にウィメンズで人気の’80sバスケットボールシューズですが、この新作はサイドのNが小さくなって型押しになり、何者でもない感が増しました。完成された人格をもったスタンスミスやエア フォース1とは違うアノニマスな魅力を楽しめます。
Masayuki Ozawa
1978年生まれ。著作に『東京スニーカー史』(立東舎)、『1995年のエア マックス』(中央公論新社)など。本誌主催による藤原ヒロシの「FRAGMENT UNIVERSITY」の助教授としても奮闘中。朝日新聞のコラムも執筆中。
Hair&Make-up:Ryoki Shimonagata
Stylist:Masaaki Ida
Models:Hisaki Hayashi Kai de Torres Kio de Torres Sanmy Yoshiaki Takahashi Yusuke Oshiba
Composition&Text:Masayuki Ozawa[MANUSKRIPT]