“東京スニーカー氏”ことエディターの小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月イチ連載。今回はスニーカーのドレスコードについて。
ドレスシューズのDNAを随所に継承しながら、ストリートというかカジュアルな着こなしのほうが似合う気がする「HAVEN」。ちょっと日焼けしたかのようなカップインソールがクラシックで、厚みも程よくていい感じ。着用後はブラッシング、大事にケアしたくなる感じも好きです。¥143,000/ジョンロブ(ジョン ロブ ジャパン)
7月からWEB UOMOでもスニーカーの連載を担当していて、月に6足、僕なりにUOMO的な視点でのおすすめを紹介しています。WEBでは新作を中心に、瞬間風速で欲しいシューズをスピーディに紹介しつつ、この連載では気になる事象について書けたらいいなと、視点を変えていますので、どちらもブックマークをよろしくお願いします。
昨今、クールビズなどの影響でビジネスの場でもスニーカーが推奨されたことで、英国やフランスの老舗シューメーカーまでスニーカーを当たり前のように作るようになりました。ストリート育ちの僕から見るとこの手のブランドはスニーカーと隣り合わせのカルチャーが違うから、ナイキやアディダスといったスポーツメーカーや、モードなメゾンのそれとは同じ土俵でとらえにくい。しかしジョンロブはそのどちらにも属すことなく、別格のクオリティをもっています。ビスポーク靴のエッセンスをステッチやフォルムにまぶしながら、パリらしい丸っこさというか、服好きに刺さる「らしさ」がちゃんとある。僕は前任の女性アーティスティック・ディレクターが就任したとき(2020年末に退任)から、高級靴のお手本のような存在感や新しさと古さのバランスのよさに惹かれるようになりました。
スニーカーラインの定番である「HAVEN」は、僕があまたある中でも好きなスリッポンの一つ。タンの下に脱ぎ履きをスムーズにするゴムをつけたり、サイドマッケイを施したミッドソールの模様がレトロバッシュみたいだったり、何かとスニーカー的なんです。それでいて、革靴に使われるものと同じスエードを使っているし、パイピングの繊細さは職人レベル。スニーカーでも十分に“ジョンロブを履いているオレ”的な幸福感を満たしてくれるって最高ですよね。
楽だからスリッポン、というのが普通ですが、僕の場合はスタイルに品格を求めるときに選びます。オペラパンプスとかカンフーシューズとか、ストリート解釈のちょっとしたお出かけ感というか。服はいつもどおりゆるくても、上質なスリッポンが一足あると、コーディネートが引き締まるから、ワードローブには絶対に必要なんです。
ジョンロブにおける世間のコモンセンスは「革靴の王様」。僕も一生履ける名品は、一秒でも早く買って損なしというポジティブなご都合主義に背中を押され、11年前にハワイで買った王道のストレートチップ「CITY-II」は、冠婚葬祭や子どもの行事など、さまざまな節目をともにして、今も変わらない僕のドレスコードです。またシューツリーの重要性やメンテナンスの大切さなど、スニーカーとは違った靴への向き合い方をいろいろと学びました。仕事以外で人に会ったり、夜に食事をする機会も再び少しずつ増えてきた今日この頃。戻ってきた日常の足元に、さらっと履いてみたいです。
Photos,Composition&Text:Masayuki Ozawa