左足のサイドビューはButterの文字ですが、右足はAppleの文字がレイアウトされています。Reebokのアイコンであるガーメントレザーは、文字どおり衣料用に使われる革で、Reebokが工場に間違えて発注したものが結果的によかったから製品化されたという逸話も。
スニーカーはルーツに忠実であるべき?
’90年代〜2000年代の僕は、いわゆるヒップホップと「裏原」と呼ばれるストリートスタイルを楽しんでました。スタイルとは全身で表現するもの。当然、足元のチョイスもそのカルチャーに付随していました。カルチャーの代弁者たちが、どんなスニーカーをどんな理由で履くか、そこに影響を受けてきたのです。そのうえで個人の好き嫌いを取り入れられるようになると、着こなしに「らしさ」や「センス」が出るんじゃないでしょうか。自分のルーツに忠実であることはリアルであること。とても大事だと思います。
僕はReebokのClub Cが昔から好きです。1985年にテニスシューズとしてリリースされました。柔らかなガーメントレザーとパイル地のライニングによる履き心地のよさは、当時のエアロビブームに便乗したReebokが最も得意とするウィメンズ視点での理想をかなえています。ミニマルなデザインもテニス業界が求めるドレスコードに沿ったもの。ここがadidasのStan Smithと同列扱いされやすい理由です。しかしClub Cは、Stan Smithのように特定の著名アスリートとイコールな関係にならなかった。2017年にモデルのジジ・ハディッドを広告に使用したことで、若い女性にとってのイットモデルになりましたが、彼女が火をつけたadidasのSAMBAほどは人気になってない。そこがいいんです。
と、まあウィメンズ感が強いスニーカーゆえにスタイリングの着地が難しいところもありますが、Maison Margiellaとのコラボレーションは、3年前のものですが、今でも週1ペースで必ず履いています。一枚のフラットなガーメントレザーにトロンプルイユという手法や、Club Cの魅力である包み込むようなフィット感とマルジェラのトリックアート、お互いの個性が生かされていて、すごく意味のあるデザインだと思います。本来のアノニマスでユビキタスであるシューズらしさはないのですが、そこがまたいいんです。
Club Cは1989年に初めて親に買ってもらったスニーカーで、思い返せば毎日のように履いていました。運動会のリレーの写真にも出てきたくらいなので、気に入ってたんだと思います。Reebokロゴとかユニオンジャックのデザインが子ども心に刺さっていて、Tシャツも着ていました。そんな自分のルーツを感じて、久々に購入したのが、このClub Cです。福岡にあるAPPLE BUTTER STOREとatmosとのコラボレーションらしいのですが、サイドウインドウのロゴに某IT企業の要素(?)がミックスされている、ウィットに富んだパロディ感が好きです。ちなみにReebokロゴは、設立初期のAppleと同じフォント「モッター・テクチューラ」で、コンピュータっぽい空気感があります。今回のサイドビューはそれとは違う’80年代のAppleにみられるフォントが使われています。わかる人にはわかる、リベラルアーツを感じるストーリーが落とし込まれていて、ユニークです。