2024.05.07
最終更新日:2024.05.07

【ニューバランス × ジョウンド】履きたいと思うデザインの条件って?|教えて! 東京スニーカー氏

JJJJoundのニューバランス

JJJJoundは、カナダ出身のクリエイター、ジャスティン・サンダースが率いるデザイン会社でフットウェアだけでなくアパレルのコラボも盛んで人気があります。ニューバランスとは2020年に992をリリース。たしかコンセプトがeverydayで、毎日履きたくなるカラーでした。今回はGORE-TEX&黒ソールなので、雨でも履きたくなります。/私物

履きたいと思うデザインの条件って?

 この前友人と話をしていて、スニーカーには「このデザインをどう服と合わせるか」と「どういうデザインならそもそも履きたいか」の2種類の考え方が前提としてあるよな、とあらためて気づきました。服好きであれば、これらって潜在的に備わっている考えで、前者の属性だと何よりスニーカーそのものが欲しくてハイプなカルチャーにも精通している、もしくはさまざまなテイストのファッションが好きな「服ヲタ」になります。僕はスニーカー好きを公言しながらも、後者の考えに寄りがち。多分、割合としては「3.5:6.5」くらい。それでいて服の趣味の幅が狭いので、ついつい足元のワードローブも限定的になってしまいます。ちなみにUOMO読者は、後者の考えでスニーカーを選んでいる人が多いかと思います。

 では、どんなデザインなら履きたいか。これはすごく考える。デザインは余計なことをしないのが基本だと思っていますが、単に真っ白や真っ黒では、スタイリングはただの色合わせにすぎない。足元に奥行き(カルチャー)がないと不安になります。となるとそのモデル自体にストーリーがあるかが大事になる。直感も大切ですが、理屈を常に探しているわけです。そのストーリーが、定番モデルであることだけではスニーカー好きとしては物足りなくて、多少の異質性が大事で、いいゆがみやひねりが加わることで美しくなっている。その矛盾が好きなんです。

 先日、JJJJound(ジョウンド)のニューバランスを買いました。モデルは2002R。2010年に発売されたランニングシューズをベースに、ソールを現代的にアレンジした、ハイテクとローテクの中間さが世の中の気分にマッチしています。JJJJoundはモントリオールのデザインスタジオで、メーカーのコラボレーション先としては近年もっとも価値の高い相手だと思います。やりすぎず、控えめでもなく、誰もが「ありそうでない」と感じられる配色を作れるんですよね。コンセプトやテーマを先につくって靴に落とし込むコラボスニーカーは、基本的に刺激物になりがちで、たとえアートとの相性はよくてもファッションとはつながりにくい。でもJJJJoundは洗練とかミニマムとかいう評価をされがちですが、匿名的な中にも配色に記号性があり、「らしさ」につながっている気がします。

 この例こそが「どういうデザインが履きたいか」の答えじゃないでしょうか。“欲しい”と“履きたい”との距離感がスニーカー業界の面白さであり難しさ。欲しいと思わせる要素は話題性や稀少性など多岐にわたりますが、履きたいと思わせる要素はファッションに直結する。だからセンスが問われます。JJJJoundはその両方をカバーする魅力があるんじゃないかなと思います。この配色もただのツートーンに見えますが、メッシュとミッドソールの色を合わせるって珍しい。機能の見せ方の観点でも、メーカーからでは生まれ得ないコラボ相手ならではの発想だと思います。

小澤匡行プロフィール画像
小澤匡行
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。近著に『1995年のエア マックス』(中央公論新書)。スニーカーサイズは28.5㎝。

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