
GAZZELE(ガゼル)は1960年代に誕生したフットボール&トレーニングシューズ。ノエル・ギャラガーやケイト・モスなどミュージシャンやセレブリティも愛用し、最もカルチャーとつながったadidasともいえる。アーセナルのエンブレムの大砲がヒールに入る特別仕様で、アッパーはスエード。
adidas人気が長く続く理由って?
連載の原稿を書くうえで、ネタとなるスニーカーに偏りがないように気をつけているつもりだけど、最近はadidasが多い気がしています。で、それってなぜだろうと考えました。例えばNIKEは、自分たちのシューズで足元のトレンドをつくるアーカイブ力やイノベーション力を強みにしている。最近はちょっと後者に元気がないけど、自家発電できるのが強み。その点、adidasはスタイルやファッションと共生しやすいから、影響をいい意味で受けやすい。この薄底ブームだって、足元というより服のトレンドが発端。Z世代をはじめとする若者(特に女性)たちの細身のスタイルが、足元にSAMBAを選んだから。しかも近年はファッションは盛り上がっているけど、素材やシルエットの変化は落ち着いていると感じています。だからadidas人気が長続きしている、というのが僕の持論です。
加えてadidasは浮気しないというか、一つのモデルが流行ると、そこに厚みをかけてくるタイプ。SAMBAはカラバリを増し、コラボレーションを巧みに手がける。さらにHANDBALL SPEZIALやGAZZELEなど、同世代の似たフォルムの靴が充実しているから盛り上げやすい。すると大きく代わり映えはしないけど、地盤が固まってくる。それが強みなんです。
今回紹介するのは、プレミアリーグの古豪アーセナルとのコラボレーション。第二弾だったかな? アーセナルは2019-’20年のシーズンに、’90年代以来となる契約をadidasと交わし、今のところ2030年までは続くそう。蜜月なパートナーシップを結んでいます。しかもGAZZELEの出自はフットボールシューズだし、ジャミロクワイとかの影響もあってUKのイメージが強い。昨年末、僕もアーセナルのホームゲームを現地観戦してきたので、ちょっと気になってます。サカと冨安がケガで見られなかったのは残念だったけど、ウーデゴールはずば抜けてうまかったです。原稿を書いている今日の段階でプレミア2位と、近年は結果も出しているし、掛け算的には間違いのないコラボレーションだと思いました。ユニフォームっぽいカラーリングもいい。
この情報、僕は知らなかったのですが、サッカーをやっている息子からリークサイトが送られて「これ日本でいつ発売するの?」と。今までは僕のような仕事が「こんなのが発売されます」と速報的な役割を担ってきたのに、今じゃデジタルがAI的に情報を興味のありそうな人に届けている。まさか、スニーカーに興味のない息子に先を越されるとは思ってもなかった。でも、そんな時代だからこそ、自分の感度のアンテナを高くもつことが大事だし、引っかかったモデルを深く理解することが大事。今はフットボールカルチャーがファッションに侵食しています。僕もこれを親子でシェアしてみようかな、と思いました。’90年代後期に流行っていたUKスポーツのテイストを、40代っぽく解釈して、大人らしく履きこなしてみたいです。

「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。近著に『1995年のエア マックス』(中央公論新書)。スニーカーサイズは28.5㎝。