エディター・小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月いち連載【教えて! 東京スニーカー氏】。第26回はシューズボックスの再利用について。
島津さんとの贅沢な個人ワークショップで気づいたのは、パーツの数は極力少なくするほうがうまく作れるということ。そして「折り筋」と「のりしろ」の大切さ。これがあると見映えもいいし、強度も高まります。今回は、3種類のナイキのボックスを使ってもらいました。エア フォース1の箱は肉厚でしっかりしているので、まるで革財布みたい。大事に使いたいです。
海外出張に行くと必ず現地でスニーカーを一足(もちろんそれ以上のときも)買います。11月はアメリカで日本未発売のニューバランスを何足か。今はちょうどロンドンに向かう機内でこの原稿を書いています。
海外サイトを頻繁にチェックしても、実際にお店で現物を見たり、現地の人たちの足元を眺めると発見も多々。これは使命と自分に言い聞かせながら旅の思い出をかたちに変えています。今回はどんな一足(もちろんそれ以上のときも)と巡り合えるか、既に楽しみです。
海外で購入した際には、その場でボックスを処分してもらいます。保管の際にないと不便なこともありますが、僕はあまり箱に固執せず、前号でスニーカーの新しい価値について書いたように、ボックスはただ積み上げるより別の保管方法を考えて再利用したいタイプ。
以前、世界中を旅してしゃれた段ボールを収集しつつ、そこから財布などを作ってアートに変換する島津冬樹さんを知りました。12月に彼のドキュメンタリー映画が公開されると聞き、本連載のためにスニーカーのボックスで財布を作ってもらおうと無邪気にオファーしたら、快くYESの返事が!
3日後にはたくさんのボックスを持参してアトリエに伺ったのです。ちなみに島津さんのバイオグラフィーや映画への経緯や思いは本誌1月号のコラムで詳しくインタビューされていますのでバックナンバーをご覧ください。
作ってもらったのは島津さんの作品の中でも一番人気の長財布。解体した一枚の段ボールから好きなグラフィック部分を使うために折れ線を避けながら型取りする作業を見て、一枚になめした革から傷や汚れのない部分を面取りする、革靴の工場で見た光景がフラッシュバックしました。
蛇腹状に折り曲げる、スナップボタンを取り付ける、水に浸して薄く柔らかくするなど簡単に真似できない作業はありましたが、アイデア次第で不器用な僕にも何か作れそう!と思えたことは収穫。早速自分でノートカバーを製作しました。不要なコピー用紙とともに二つ折りし、太いゴムで束ねて製本するだけ。
端の部分をお気に入りのテープやステッカーでカスタムすれば、耐久性も増すし、愛着も深まる。ちなみに平綴じの雑誌のように背の幅をちゃんと計算して裁断するのがうまく仕上げるコツです。
スニーカーに付加価値が求められる昨今ですが、ボックスも含めて観賞用に保管しても日の目を浴びません。著名デザイナーとの限定コラボだって世の中に同じものが山ほどあります。ガンガン履くことも形を変えて使うことも考え方によっては付加価値だし、それが自分だけのストーリーになる。
新品を撮影してSNSに公開するより、個性を出してから人と共有するほうが、スニーカーは楽しいと島津さんに会ってあらためて気づくことができました。映画『旅するダンボール』は、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国劇場で公開中ですので冬休みにでもぜひ観てくださいね。
Photo:Yuichi Sugita
Text:Masayuki Ozawa
(2019年2月号掲載)