エディター・小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月いち連載【教えて! 東京スニーカー氏】。第22回は「NIKE: ON AIR」企画の取材のため、米国ポートランドのナイキ本社へ!
左のエア マックス1 が、シカゴブルズのユニフォームを着ているナイスガイ、宅万勇太さん(1)のデザイン。その上の女性はロンドンのウィナーのラソードさん(2)。右は上海のルーさん(3)。みんな楽しそうにスニーカーと向き合っていました。
最近、僕の中で気になっているのがNIKEiD。日々リリースされる新作の情報についていく努力はするんですが、最近のスピード感は半端なくて、「あ、こんなモデルもいつの間にか出てたんだ」と見逃してしまうことばかり。だったらベーシックなベースモデルに、自分なりのファッションの気分やトレンドを取り入れて履くのも楽しいかな、と思うようになりました。若い頃はメーカーが発信する範疇で欲しいものを決めていたけど、40歳男子ともなると自分の世界観がある程度固まってくるので、そういう楽しみもアリかと。大人になったってことかな。
今年3月、東京、ソウル、上海、パリ、ニューヨーク、ロンドンの6都市から1名ずつ、それぞれの街をお題にナイキのエア マックスをデザインできる企画「NIKE: ON AIR」が開催。見事、実際に製品化して発売する権利を勝ち取った各都市のウィナーが、出来上がった最初のサンプルをチェックするために、7月某日に米国ポートランドのナイキ本社に集まり、社内デザイナーとの綿密でおしゃれなミーティングが行われました。その模様を取材するために、東京スニーカー氏も渡米。3年ぶりのナイキ本社取材に、エアよりもテンションがマックスでした。
広大な社内にはおしゃれなモニュメントが随所に(4)。ポートランド市内に寄付された自転車はナイキのボックスをイメージした配色(5)。パリのポンピドゥセンターに着想を得たこの建物は、なんと社員用パーキング!(6) トイレの表示までアスリート(7)。すべてがおしゃれ!
ナイキの本社は別名「キャンパス」と呼ばれ、その広さは東京ドーム4個分ともいわれています。年々増築されていくビルも、働く人たちもおしゃれ。時代やファッション性を大切にするスタイリッシュな40歳男子も多く、さすがナイキと感心。ウェアはシンプルに、小物やソックスを工夫して話題のスニーカーをさらりと履きこなす、東京にはない海外独特の感覚は、ぜひ真似したいと思いました。
6人のウィナーたちによるエア マックスはどれもコンセプチュアルでアートを感じました。激戦の東京を勝ち抜いた宅万(たくまん)勇太さんは普段はIT関係の会社にお勤めのUOMO世代。東京という複雑な街を迷路にたとえた、地下鉄の路線図をグラフィカルに表現したアッパーと、東京タワーを連想させるミッドソールの赤いエアの窓が特徴。統一感と主張のバランスや、歴代で最もシンプルな初代エア マックスをベースに選ぶところにコアな大人のスニーカー愛を感じます。
ほかの国のウィナーも雑多な人種や文化が集まる街の様子や、自身の初デートという私的な思い出を色や柄で表現するなど、個々のユニークな発想を目の当たりにし、とても新鮮でした。そしてコラボや限定といったスニーカー自体のもつ価値をスタイルに取り込んで満足するよりも、好きな服との相性を楽しめる一足が欲しい、と思うように。完成品が地味だろうと派手だろうとNIKEiDで自分らしさを表現するのもなかなか楽しいですよ。ちなみにこれらの発売時期はまだ未定だそうですが、お楽しみに!
Photos&Text:Masayuki Ozawa
(2018年10月号掲載)