2018.02.25
最終更新日:2024.03.07

【教えて! 東京スニーカー氏 #16】アメリカントラッドなスニーカーって、何がありますか?

エディター・小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月いち連載【教えて! 東京スニーカー氏】。第16回はアメリカントラッドなスニーカーについて。

【教えて! 東京スニーカー氏 #16】アの画像_1
【教えて! 東京スニーカー氏 #16】アの画像_2

デッキシューズの元祖、スペリー トップサイダー。N.ハリウッドのロゴを連ねたシュータンに注目。(各)¥14,000/N.ハリウッド×スペリー トップサイダー(ミスターハリウッド)



さて、今回のテーマはアメリカントラッドです。最近の40歳男子のファッションはモードの勢いが強く、スニーカーも随分と派手なデザインが増えましたが、編集部内では早くも「次はアメトラ!」と声高に宣言されています。英国ブームだったはずが、もう次か、と移ろいの早さを感じます。



でも、もし本当にファッションがトラッドブームになったら、スニーカー市場は困ってしまいます。昨今の英国ブームにも言えますが、アメトラとは簡潔に言えばアイビー世代のことを指すので、時代的には1960年代のこと。当時、スニーカーブランドなど限られていて、名著『TAKE IVY』の写真を見ても足元は革靴ばっかり。ナイキの誕生が1970年代ですし、ヴァンズも西海岸のビーチでひっそりと生まれた頃。東海岸のアイビーリーガーたちが運動するときに履くスニーカーなんてトップサイダーやケッズ、プロケッズといった程度で、正直、面白くはありません。

【教えて! 東京スニーカー氏 #16】アの画像_3

スエードアッパーとガムソールの組み合わせがスケートシューズを連想。金のハトメもグッド。¥8,900/プロケッズ(ケッズ インフォメーションセンター)



約10年前、トム ブラウンやエンジニアド ガーメンツなどの爆発的な人気とともにアメトラが大流行りしたのは、UOMO世代には記憶に新しいところ(もう10年か…)。当時の足元はオールデン一択で、ニューバランスが孤軍奮闘していたレベル。ナイキやアディダスのヴィンテージ加工がトピックになったのもトラッドの影響で、基本的にはスニーカーは冬の時代でした。



僕にとってリアルに体験していないトラッドは新鮮で、若気の至りもあり、過去のルックを完コピすることが正解と思っていました。着こなしに遊びがなくコスプレ状態。でも40代になると、もう少し余裕をもち、自分なりの取り入れ方を楽しみたいと思います。



そのお手本が、2018SSのN.ハリウッドのコレクション。パイピングブレザーや丸首のチルデンセーター、コート丈のスタジャンなどが面白かった。肩が落ちたフラップの大きいジャケットに小襟のBDシャツというアンバランスな合わせ技には、昨今の’90sブーム特有の「いなたさ」を表現した新しいトラッドを感じたし、トップサイダーの定番CVOをレザーで別注していて、かっこよかった。10年以上前に買って履いていたトップサイダーを、ソールが黄ばんでも「また履くときがくる」と言い聞かせて保管していましたが、残念ながらその出番はなさそうです。

【教えて! 東京スニーカー氏 #16】アの画像_4

イタリア発ながらスペルガもアイビーリーガーに愛されたブランド。定番はこの「2750」。オール黒なら印象はモード。¥7,800/スペルガ(プロスペール)



そのほかにはアイビーの王道、プロケッズの最近のラインナップから、ガムソールでスエードというスケートライクなデッキシューズをインラインで見つけました。イタリア生まれの老舗スペルガでは、名品「2750」モデルに、今季ロゴまで同色のトリプルブラックがリリースされています。



スペルガなんて真っ白かネイビーのキャンバスのみが昔は正解だと思い込んでいましたが、黒スニに履き慣れたUOMO世代なら、上手に履きこなせるのでは? 僕も同色のソックスにワイドなスラックスを合わせるなど、今季らしく着こなしたいと思っています。先にも書きましたが、もしトラッドを先取りするのなら、単なる過去のトレースじゃ面白味に欠けるもの。定番に固執せず、時代の変化と進化を楽しめれば、スニーカーも楽しめると思います。

小澤匡行プロフィール画像
小澤匡行
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。スニーカー好きが高じて『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓。靴のサイズは28.5㎝。

ケッズ インフォメーションセンター TEL: 03-5413-7195
プロスペールTEL: 03-5778-4886
ミスターハリウッドTEL: 03-5414-5071

Illustration:Yoshifumi Takeda
Photos:Yuichi Sugita
Stylist:Masashi Sho
Text:Masayuki Ozawa
(2018年4月号掲載)

RECOMMENDED