2018.01.25

【教えて! 東京スニーカー氏 #15】クラシックな名品が愛され続ける条件って、何ですか?

エディター・小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月いち連載【教えて! 東京スニーカー氏】。第15回は、誕生から長い時間がたっても愛され続ける名品、アディダス オリジナルスのキャンパスについて。

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2001年モデル
2000年代に海外企画でリリースされたキャンパスは、’90年代から変わらない丸みを帯びたフォルムが特徴で、ソールもやや分厚め。スリーストライプスの脇にはCAMPUSの文字。日本だと商標の問題で使えなかったので、これがあるのは国内未発売の証拠だった。私物



ファッションの世界には、誕生から長い時間がたっても愛され続ける名品がたくさんあります。定番ってやつです。それぞれに愛される理由がありますが、スニーカーの魅力はファッションとプロダクト的な要素が半々と考える僕は、常に定番を2種類のグループに振り分けています。



例えばリーバイス®の501®やバーバリーのトレンチ、チャンピオンのリバースウィーブ、コンバースのオールスター、レッド・ウィングのアイリッシュ・セッターはカテゴリー「A」であり、マッキントッシュのゴム引きコート、ジョン スメドレーのニット、オールデンの990、ナイキのエア フォース1はカテゴリー「B」に属します。両者の違いは、何でしょうか?

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CP 80s
近年まで発売されていたCP 80sは’80年代のフランス製のキャンパスに近いディテール。スリーストライプスも細めで、端がギザギザに処理されている。クラシックなディテールだ。ソールは踵から爪先に向かって薄くなっており、細くシェイプされている。私物



前者の「A」は、長い間でディテールが変わっている名品。それに対して後者の「B」は変化のない名品です。「A」は微細な変化に価値を生み出し、古着でも人気が高いです。「B」はファッション的な魅力が強く、時代感でヴィンテージの価値が高騰&暴落することもありません。どうせなら新品で欲しいと思うものです。



例えばコンバースのオールスターは、市場価値が軒並み上昇中で、’70〜’80年代製は4万〜5万円、’90年代製でも3万円台と手を出しづらいレベル。’90年代のそれは最後のアメリカ製というだけで、実際フォルムはずんぐりむっくりで好みではありませんが、’80年代のそれは当時らしい細身の美しさが好きです。しかしこのオールスター高騰問題は、最近の日本製コンバースや海外限定のチャックテイラーの登場で解決しました。古いものを知ると、手を替え品を替えで意匠に凝った現行モデルを楽しむことができます。



その点で最近楽しいのが、アディダス オリジナルスのキャンパス。初めて購入したのは’83〜’87年頃まで製造された初期フランス製の復刻扱いとなる’94年以降のそれ。僕にとってキャンパスの魅力は“色”でした。’90年代後半のユーゴスラビア製やUK限定に多かった、鮮やかで珍しい配色にセンスを感じていました。

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ディセンダント別注モデル
昨冬に発売されたディセンダント別注はソールがえぐれた’80s独特のデザイン。シューレースの穴の数が8つ(その他は7つ)だったり、トレフォイルの®マークの位置などはフランス製に忠実だ。ヒールの補強ステッチもCP 80sの3本に対してこれは2本である。私物



その後ベーシックカラーをひととおり履き、今はフォルムの変遷を楽しんでいます。2008年頃からCP 80sという’80年代、つまりフランス製のラストを採用した細身のキャンパスが多くリリースされました。ソールがくびれていたり、土踏まずの部分がえぐれていたりと随所の細さが古さの象徴で、好きでした。



2017年秋冬からは最新のスペックに変更され、’90年代の最初の復刻に酷似した仕様になっています。ヴィンテージ好きにはちょっと残念な仕様変更かもしれませんが、最近は足元にボリューム感が欲しい気分なので、今の流れにマッチした改良かもしれません。ちなみにディセンダント別注は、CP 80sよりもフランス製のアーカイブに忠実な仕様になっています。ソールの形状だけでなく、アッパーのステッチまでこだわりの深さを感じられる、さすがの出来映えです。



CP 80sと現在のキャンパスは似て非なるものだから、パンツの種類や太さによって履き替えています。そういう接し方ができるから、クラシックを飽きずに楽しむことができます。

小澤匡行プロフィール画像
小澤匡行
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。スニーカー好きが高じて『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓。靴のサイズは28.5㎝。

Illustration:Yoshifumi Takeda
Photos:Yuichi Sugita
Text:Masayuki Ozawa
(2018年3月号掲載)

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