2017.12.25

【教えて! 東京スニーカー氏 #14】こはぜ屋の「マラソン足袋」を履いたら、速く走れますか?

エディター・小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月いち連載【教えて! 東京スニーカー氏】。第14回はドラマ「陸王」(原作:池井戸潤)に登場する“マラソン足袋”について。

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1 兵庫県宍粟(しそう)市のランバード工場内にて。「陸王」の製作には通常のシューズの1.5倍の時間がかかっているとか。



ドラマをご覧の方ならお気づきかもですが、ドラマ「陸王」(原作:池井戸潤)に登場するマラソン足袋も、そのライバルとなるアトランティス社の「R2」モデルの製作も実はミズノ。しかも1月号で紹介した、マーガレット・ハウエルとミズノのコラボレーションと同じ、兵庫県のランバード工場で生産していたのです。施設内には、なんと、出来たてホヤホヤのマラソン足袋が! 製作を担当したミズノテクニクスの亀井晶さんに、突撃取材してきました。

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2 ドラマ「陸王」のマラソン足袋は、通気性に優れたメッシュと軽くて強度の高い「ダニーマ」を使用。黄色のソールは劇中に出てくる「シルクレイ」をイメージ。



亀井さんは、オリンピックに出場するようなトップレベルのアスリートの足型をチェックし、最適なシューズを提供するシューフィッター。劇中でたとえるなら村野さんで、さらにものづくりまでこなす超スペシャリストです(写真4)。正月のニューイヤー駅伝や箱根駅伝で選手の足元に注目すると、ミズノの着用率はとにかく高く、そのシェアは30〜40%ともいわれています。



ミズノがなぜこんなに愛されているのか。それはスポーツシューズの生産が近隣のアジア製ばかりの中、ミズノは契約アスリートが履くトップモデルを「その人に合わせて」作っているから。亀井さんも直々に足型の計測から製作まで携わっているとか。まさにドラマそのもの!

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3 劇中に登場するアトランティス社の「R2」。ミズノのレーシングシューズに劣らないクオリティの高さ。



「年間で言うと、陸上スパイクで700足弱、マラソンシューズで1800足くらいをいろいろな職人の手を借りながら、私がハンドリングしていく感じですね。実際に大会の会場に行かせていただき、そこで選手と対話することが多いです。しかしミズノは技術の会社なので、私はあくまで影武者として選手を支えたい」と謙遜するところがカッコイイ! 「マラソン足袋見せてください」とお願いしても、快く持ってきてくれたジェントルマンです。

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4 シューフィッター&クラフトマンの亀井さん。寡黙な人だが、シューズに対する思いは熱い。



手に取って感じたのは、とにかく軽さ。番組の演出上、ソールを薄くするためにミッドソールを省略しているのが理由の一つですが、クッション性のリアリティはともかく、アッパーの素材はミズノのトップモデルと同レベル。袋縫いも足袋以上の完成度です。



「ドラマの監督は爪先の丸さにとてもこだわっており、足袋型のラストの製作に苦労しました。足の形は人それぞれ違います。指の股の位置が合わないと、履き心地がしっくりこないので、これは実際に計測したデータに基づいています」とのこと。では足裏全体で着地する素足感覚の「ミッドフット走法」にはマラソン足袋がいい、と話題ですが…。

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5 この爪先の割れに注目。



「爪先と踵の高低差をドロップといい、その差が少ないシューズほどミッドフット走法に適しています。しかし脚力がしっかりしていないランナーは、ヒールアップしたシューズを履いて踵から着地するほうが、日本の道路事情を考えると足に優しいとも言えます」ってことでした。



最後に僕のラン事情をお伝えしたところ、実業団選手もゆっくり走るときに履く「ウエーブライダー」がいいとのこと。何はともあれ、亀井さんにモデルを紹介してもらえて感無量! そしてドラマ「陸王」も最終回を残すのみ。シューズに注目しながら、感動!?のフィナーレを楽しみましょう。

小澤匡行プロフィール画像
小澤匡行
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。スニーカー好きが高じて『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓。靴のサイズは28.5㎝。

Illustration:Yoshifumi Takeda
Photos&Text:Masayuki Ozawa
(2018年2月号掲載)

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