2019.08.30

北欧のスニーカーはどこが違う? 【教えて! 東京スニーカー氏 #33】

“東京スニーカー氏”ことエディターの小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月イチ連載。今回のお題は「北欧ブランドのスニーカー」について。

北欧のスニーカーはどこが違う? 【教えての画像_1
北欧のスニーカーはどこが違う? 【教えての画像_2

二人の共同設立者によって2010年に設立されたストックホルム発のブランド。これは海外のドーバーストリートマーケットで購入したカラーで、淡いパープルのスエードに惹かれました。甲の高密度のナイロンがいいヴィンテージ感を演出しています。マラソントレイルはこれで3色目。ほかにホワイト、ブラック系を所有しています。/私物



出張に履いていくスニーカーを選ぶプロセスはとても楽しい。持っていく服との相性はさることながら、誰に会うかとか、都会か、郊外かなど、その街に溶け込むかをすごく考えます。仕事をしているときにどんなに気に入って履いていても休日にラフな格好に合わせると気張って見えたり、その逆もある。



その異国の地バージョンは、もっと複雑です。海外出張時にスニーカーを一足買うことをタスクにしていますが、それは自分の中の意外な発見を楽しむため。その街に合うスニーカーを見つける作業は、自分の着こなしの幅を広げてくれます。



某ファッションニュースサイトで、先日行われたパリ・コレクションの来場者はナイキとサカイによる「LDワッフル」と「ブレーザー ミッド」ばかりだった、という場外スナップが掲載されていました。モードの現場に現れるモードな人たちの空間には、それが合っているのでしょう。僕も最近のお気に入りの一足です。



そんな頃、スウェーデンとフィンランドへ行ってました。疲れにくさを考えたら、ニューバランスのハイテクな「M990」を選ぶところですが、今回は初めての北欧旅ということで、履き心地よりも街との相性を優先しました。



スパルウォートはスロバキアの古い靴工場で見た1950年代の機械や木型を復活させたブランド。本社がストックホルムというのがいちばんの理由ですが、やはり東京ブランドには東京の空気感があるのと同じように、北欧ブランドならではの理由が、素材や色使いに表れるもの。



この「マラソントレイル」は、トラック用の陸上シューズに着想を得たモデルですが、生産背景を生かしたクラシックなデザインに、洗練された雰囲気がミックス。コム デ ギャルソン・シャツの別注が継続的にリリースされているのも、センスのよさを物語っています。



近代のスウェーデンは戦争を経験していないため、古きよき建造物や石畳が残っています。そんな中世の街並みには、ハイテクよりも、レトロな雰囲気がよく似合う。加えてここはデザインもITも先進国。スーパーの乳製品やお菓子売り場のパッケージや標識一つとってもおしゃれなのは有名な話で、これらのロゴや文字を多用したレイアウト感は、スパルウォートも共通しています。



以前にコモリのデザイナーの小森啓二郎さんにUOMOのスニーカー特集で取材させていただいた際の「日本のお店で棚に並んでいてもスルーしてしまうのに、海外だと魅力的に見えて買ってしまうものがある」という言葉が印象的で、共感します。



トレンドの中心であるネオンカラーや原色、ダッドシューズに押され気味なシンプルでレトロなスニーカーを日本とは違う背景とフレームにはめると魅力的に見えるもの。スパルウォートの着用感も侮っていましたが、毎日履いているとインソールのカーフやメッシュのアッパーに足がいい具合に収まってきます。個人的にはシュータンがあと1㎝長いといいんですけどね。

小澤匡行プロフィール画像
小澤匡行
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。スニーカー好きが高じて『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓。靴のサイズは28.5㎝。

Illustration:Yoshifumi Takeda
Photo&Text:Masayuki Ozawa
(2019年9月号掲載)

RECOMMENDED