“東京スニーカー氏”ことエディターの小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月イチ連載。今回のお題は「ランニングの楽しみ方」について。
出張のお供は、GYAKUSOUの「エア ズーム ペガサス 35 ターボ」。高反発のズームXフォームはラン中はもちろん、歩くだけでその跳ねるような履き心地を体感できるので、普段履きも最適。何より前衛的なカラーリングがコーディネート欲をそそります。今回からビジュアルをイラストと写真のミックスにリニューアルしました。/私物
僕の好きなランニングとは、フルマラソンやトレイルランニングのレースに出場したり、そこに目標を設定して努力することではありません。人生が引き締まりそうでいいのですが、自分の性格と過去の運動経験から考えると息が詰まりそうで。
まず引き締めたいのは体型なので。観たい映画があるときにジムで走りつつ観たり、聴きたい音楽があるときに走ったりとか、別の目的に「走る」を組み合わせると、自分を追い込まずにすむというか、ランニング漬けにならずにすむというか。
だからシューズ選びには機能と同じくらいファッション性が重要だし、普段着との相性も考えますが、これは意識的にランニングウェアと普段着の色使いを同じにすることである程度解決できている気がします。
走ること以上にマラソンや駅伝観戦が好きですが、この時期はトラックが盛り上がっています。先日、大阪まで気分転換に一人旅して日本選手権の10000mを応援してきました。このレースは9月にドーハで行われる世界陸上の選考会を兼ねており、箱根を沸かせた各大学のエースたちが社会人になってさらに努力を重ね、わずか2〜3名の枠を争う戦いに、一人で興奮していました。
そしてこの連載のネタにするための足元チェックも忘れずに。近年の各メーカーの新作は個性があって楽しい。シューズが自分の人生を左右する各選手がどこのメーカーをガチで選んでいるかは、非常に興味深いところです。
女子の表彰台に上った3名はすべてナイキでした。厚底で話題のヴェイパーシリーズがマラソンだけでなくトラック競技でもお馴染みになりました。驚いたのは過去にアシックスで名を馳せたシューズ職人、三村仁司さんと契約したニューバランスの多さ。この傾向は特に女子に多く、メーカー別のシェアはトップでした。
男子の日本人1位選手はアディダスのスパイクでしたが、その後はナイキが独占していました。続いて多かったのはアシックスとミズノ。この辺は、日本の老舗の強みですが、最も色使いが独特でした。
競技場のヤンマースタジアム長居から約5㎞離れた天王寺近辺のホテルを拠点に、往復10㎞強をランニングしながら観戦。帰りは行き道でふと目に入って気になったたこ焼き屋に立ち寄り、6個食べました。タイムを気にしなければ、途中で買い食いするのも自由だし、信号で足を止められてもがっかりしない。その土地の表情も見えるし、気づきも多いんです。
ランニングって、ストイックで優等生的なイメージが強いですが、もっとストリートスタイルでいいと思います。街の発見を楽しんだり、ほかの好きな自分の趣味と向き合う時間に使うとか。この出張の移動もランも仕事も、ナイキのGYAKUSOU一足で乗り切りました。このランニング優等生を感じないカラーリングは、僕にとってシューズ選びの大切な基準です。もっとカルチャーと結びついたカラーがたくさん発売されてほしいです。
Photo&Text:Masayuki Ozawa
(2019年8月号掲載)