“東京スニーカー氏”ことエディターの小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月イチ連載。今回のお題は「スニーカーとしてのラグジュアリー」について。
素材は光沢のあるカーフレザー。最初はしっかりと硬さがあるんですが、履き込むと随分と印象は変わりそう。履き口が薄いのも、スポーツシューズとは違うラグジュアリーな要素の一つ。ゴールドのロゴ使いも大人リッチ。¥60,000/ジバンシィ(ジバンシィ表参道店)
レストランのドレスコードって、ジャケット着用とかショーツNGとか、洋服の話ばかりですよね。足元に関しては「サンダルNG」は多いのですが、スニーカーについての詳細までは、意外や論点が及んでいません。「短パンはダメよ。ジャケット着てね」と言われたら足元は「わかるでしょ?」ってところでしょうか。
Tシャツ、ポロシャツ、ジーンズなどが洋服のアリ・ナシのボーダーである限り、一般的に運動靴やワークシューズは避けるべき認識。スラックスと相性抜群な4万円もするニューバランスのハイテクや、上質な本革を使ったナイキのバッシュがありかなしかと聞かれても、そもそものデザインが運動靴ならNGってこと。仮に店前で止められて、いくら屁理屈こいたって無駄なのです。
唯一のポイントはヒールに施された二つのノット。靴を脱いで下駄箱に入れたときにも差がつくポイント。ベロとヒールの高さが同じくらいが自分にとっての黄金比率。
じゃあおとなしく革靴履いてればいいじゃんって話ですが、そこはスニーカーで乗り切りたい東京スニーカー氏。スポーツするためじゃないスニーカーだってたくさんあります。
そこで今いちばん気になっているのがジバンシィ。空前のスニーカーブームの影響で、ここ数年はメゾンの足元もストリートやスポーツが重要なキーワードになっています。その中でジバンシィのスニーカーって、旬をとらえながらも、品格が別格。ここ数シーズン、新作が出るたびにそう思います。
「スニーカー=運動靴」とか「革靴はスニーカーより格上」の概念がいっさいないんですよね。内羽根、外羽根問わずドレッシーな革靴のハトメ数は基本5つに対し、スニーカーのローカットの多くは7つ。でもこれは8つもある(ヴァンズのオールドスクールも8つ)。このぎゅっと詰まったところに品を感じるんです。
革靴っぽく見えることがドレスコードである時代は終わりました。「スニーカーとしてのラグジュアリー」が新しい時代だし、その的を射ていれば高級なレストランでも気後れしません。しかも流行りのインスタ映えと無縁なミニマムなルックスも好印象。全体のバランスを整えるステッチや切り替えがないのにまとまって見えるのは、シューズ本来のフォルムが上品で美しい証拠だと思います。
Illustration:Yoshifumi Takeda
Text:Masayuki Ozawa
(2017年11月号掲載)