2017.08.25

【教えて! 東京スニーカー氏 #11】この秋冬、勢いあるな、って感じるブランドはなんですか?

“東京スニーカー氏”ことエディターの小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月イチ連載。今回は今季の推しのメーカーということで、アシックスについて。

【教えて! 東京スニーカー氏 #11】この画像_1
【教えて! 東京スニーカー氏 #11】この画像_2

(上)定番「GEL-LYTE V」をシームレスなアッパーにモダナイズ。スリムな履き口が美しい。¥13,000/アシックスタイガー・(中)「GEL-KAYANO TRAINER」をニット素材のアッパーで製作。上同様、アクティブな休日履きには十分すぎるスペックだ。¥14,000/アシックスタイガー・(下)オニツカタイガーとアンドレア・ポンピリオとのコラボは’70年代を想起させるフォルムにラバーをまとい新しいクラシックを表現。¥10,000/オニツカタイガー×アンドレア・ポンピリオ(すべてアシックスジャパンお客様相談室)



近年のスニーカーブームは健康志向の世界的な高まりが根底にあります。身軽でいたい、ヘルシーに見えたい気持ちがおしゃれの源になっていて、世の中の足元を革靴からスニーカーに替えました。



ランニング好きの自分にとって、運動する際にアシックスが不可欠だったのは青春の原体験によるものですが、最近はファッション性がずいぶんと高まってきたように思います。ナイキやアディダスなどのスポーツブランドが先にライフスタイルを提案したことでスポーツミックスの着眼点が明確になり、今度はライフスタイルブランドがスポーツ寄りのものを提案するようになりました。



最初は「餅は餅屋だ」なんて意見もありましたが、今じゃいちばん気軽で安いスポーツウェアがユニクロの時代ですから。お互い歩み寄り「やあ、どうも」ってのが現状で、その中でアシックスが気になるって感じです。



アシックスには現在「オニツカタイガー」と「アシックスタイガー」、そして本気系スポーツの「アシックス」の3ブランドが存在していますが、今は’90sブームの影響で、’80年代後半〜2000年頃のアーカイブをベースにした「アシックスタイガー」が注目されているんです。特に秋冬は魅力的なアーカイブに現代のテクノロジーを融合した新作が増えましたが、一方で本気系の「アシックス」もおしゃれに進化するなど、ブランド同士での歩み寄りが始まっている。



例えば僕がランニングで愛用している人気のゲルカヤノシリーズは、1993年の誕生以来、ほぼ毎年アップデートし続けているため「GEL-KAYANO」がつくモデルは「アシックスタイガー」も「アシックス」も両方あるんです。しかも前者はアッパーがニットだったりしてルックスは完全にナウ。これは最近の「あるある」ですが、このミックス感が最近のアシックスはうまいですね。



海外のデザインチームがグローバルで活躍しているアシックスに、日本のメーカーって感覚はあまりありません。海外は終身雇用の意識が日本の100倍低いだけに、優秀なデザイナーをメーカー同士で引き抜き合ったり、アップルなど異業種のプロダクトデザイナーがスニーカーにかかわることも普通。だから最近はメーカー同士の差が縮まり、フラット化が目立ちます。



その中で’90年代のアシックスは機能を追求しすぎた結果、ナイキのファッション化現象が引き起こした空前のスニーカーブームに乗り遅れました。ただ、その寡黙な頑張りが功を奏し、今になって「アシックスタイガー」の特異性が、ほかにない個性を生み出しているんです。

小澤匡行プロフィール画像
小澤匡行
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。スニーカー好きが高じて『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓。靴のサイズは28.5㎝。

アシックスジャパンお客様相談室 TEL: 0120-068-806

Photos:Yuichi Sugita
Illustration:Yoshifumi Takeda
Text:Masayuki Ozawa
(2017年10月号掲載)

RECOMMENDED