2017.03.25
最終更新日:2024.03.07

【教えて! 東京スニーカー氏 #6】オジさんじゃなくて大人なスニーカーって、つまりどういうことでしょうか?

“東京スニーカー氏”ことエディターの小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月イチ連載。今回のお題は「大人なスニーカー」について。おすすめの2ブランドがこちら。

【教えて! 東京スニーカー氏 #6】オジの画像_1

連載6回目にしていきなり最終回を迎えてしまったかのようなスケールの大きい質問に、若干戸惑いを感じています。口では「もう年だから」とか言っちゃうものの、UOMO読者の人たちって、なんだかんだで世間を見渡せば、実年齢マイナス5歳はキープしていると思っているのではないでしょうか。



見た目かメンタルかはさておき、“ニッポンのオジさんを若々しく”なんて資生堂からも好かれそうなキャッチが似合う人こそがスマート40’s、つまりUOMO読者なワケです。



スニーカーも身分不相応の装飾で、ステイタス(=年齢)を高く見せる発想は、若々しさから遠のきます。厚化粧よりすっぴん美人、温野菜より生野菜、ハイテクよりローテクなヘルシー感が、レディス主導でスニーカー人気を盛り上げてきました。

【教えて! 東京スニーカー氏 #6】オジの画像_2

ひもなしでも履けるエラスティックベルトが甲についたジャーマントレーナーの現代解釈版。この靴、結構お買い得かも。¥28,000/リプロダクション オブ ファウンド×ソフネット(SOPH.)



そんな中で、僕がいい具合に大人だな、と思うブランドがリプロダクション オブ ファウンドとスパルウォート。共通しているのはミリタリーの品のいい部分だけつまんでいるトコロ。ミリタリーって軍モノですから、基本的に地味。しかもトレーニングシューズはいわば学校指定靴ですから、右に倣えの発想を上品に見せているのに好感がもてます。



あと作っている工場が両者ともスロバキアでした。旧チェコスロバキアは割と靴作りの中心地で、陸続きのヨーロッパをいいことに、以前は余るほどあった国営工場が各国の軍用スニーカーをがっつり請け負っていたんです。その数も今では限りあるものになりましたが、当時の技術と考え方をもった「背伸びをしない」優秀な職人が残っているそう。

【教えて! 東京スニーカー氏 #6】オジの画像_3

コム デ ギャルソンとのコラボレーションで一躍話題になったスパルウォート。このモデル名は「PITCH」です。¥37,000/スパルウォート(シップス 渋谷店)



彼らも自分たちが求められている長所をわかっているそうで、機械も変えず丁寧に作るそう。そこに時代の配色や素材をうまく取り入れることで、伝統工芸にならずモダンに見せているのが両者。規則的でインダストリアルなインソールやシュータンの書体デザインも今っぽいし、玄関に並べてもインテリア感がありますよね。



しかしこの両者、細部に違いを感じます。ソフネット別注のリプロ〜は縫製が美しく整っていて、スニーカーにはもったいない財布みたいな革を使っています。一方でスパルウォートは、いい意味で不均一な抜け感が好印象。どちらもマイナス5歳をキープできる、いい意味で装飾性の低い、無垢なヘルシー感のある大人スニーカーだと思います。

小澤匡行プロフィール画像
小澤匡行
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。スニーカー好きが高じて『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓。靴のサイズは28.5㎝。

シップス 渋谷店 TEL: 03-3496-0481
SOPH. TEL: 03-5775-2290

Photos:Yuichi Sugita
Illustration:Yoshifumi Takeda
Text:Masayuki Ozawa
(2017年5月号掲載)

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