“東京スニーカー氏”ことエディターの小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月イチ連載。今回のお題は「大人なスニーカー」について。おすすめの2ブランドがこちら。
連載6回目にしていきなり最終回を迎えてしまったかのようなスケールの大きい質問に、若干戸惑いを感じています。口では「もう年だから」とか言っちゃうものの、UOMO読者の人たちって、なんだかんだで世間を見渡せば、実年齢マイナス5歳はキープしていると思っているのではないでしょうか。
見た目かメンタルかはさておき、“ニッポンのオジさんを若々しく”なんて資生堂からも好かれそうなキャッチが似合う人こそがスマート40’s、つまりUOMO読者なワケです。
スニーカーも身分不相応の装飾で、ステイタス(=年齢)を高く見せる発想は、若々しさから遠のきます。厚化粧よりすっぴん美人、温野菜より生野菜、ハイテクよりローテクなヘルシー感が、レディス主導でスニーカー人気を盛り上げてきました。
ひもなしでも履けるエラスティックベルトが甲についたジャーマントレーナーの現代解釈版。この靴、結構お買い得かも。¥28,000/リプロダクション オブ ファウンド×ソフネット(SOPH.)
そんな中で、僕がいい具合に大人だな、と思うブランドがリプロダクション オブ ファウンドとスパルウォート。共通しているのはミリタリーの品のいい部分だけつまんでいるトコロ。ミリタリーって軍モノですから、基本的に地味。しかもトレーニングシューズはいわば学校指定靴ですから、右に倣えの発想を上品に見せているのに好感がもてます。
あと作っている工場が両者ともスロバキアでした。旧チェコスロバキアは割と靴作りの中心地で、陸続きのヨーロッパをいいことに、以前は余るほどあった国営工場が各国の軍用スニーカーをがっつり請け負っていたんです。その数も今では限りあるものになりましたが、当時の技術と考え方をもった「背伸びをしない」優秀な職人が残っているそう。
コム デ ギャルソンとのコラボレーションで一躍話題になったスパルウォート。このモデル名は「PITCH」です。¥37,000/スパルウォート(シップス 渋谷店)
彼らも自分たちが求められている長所をわかっているそうで、機械も変えず丁寧に作るそう。そこに時代の配色や素材をうまく取り入れることで、伝統工芸にならずモダンに見せているのが両者。規則的でインダストリアルなインソールやシュータンの書体デザインも今っぽいし、玄関に並べてもインテリア感がありますよね。
しかしこの両者、細部に違いを感じます。ソフネット別注のリプロ〜は縫製が美しく整っていて、スニーカーにはもったいない財布みたいな革を使っています。一方でスパルウォートは、いい意味で不均一な抜け感が好印象。どちらもマイナス5歳をキープできる、いい意味で装飾性の低い、無垢なヘルシー感のある大人スニーカーだと思います。
SOPH. TEL: 03-5775-2290
Illustration:Yoshifumi Takeda
Text:Masayuki Ozawa
(2017年5月号掲載)