エディターの小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月イチ連載「教えて! 東京スニーカー氏」Vol.04
個人的にヴァンズといえばネイビーだが、近年は黒が一番人気という。ひもの結び方は人それぞれ。ヴァンズやアディダスの昔の広告は上のタイプが多かった。スニーカー(右)¥5,500・(左)¥4,500/ヴァンズ(ヴァンズ ジャパン)
悩ましいのは、スタイリングにカルチャー濃度をどう高めたいかでチョイスが変わるということ。確かに最近は大人のヴァンズブームです。「いや、昔から好きだったし」感をアピールしたい人は、歴史のあるオーセンティックがよいと思います。ただしスケートよりもサーフのイメージが個人的に強いため、少し慎重になったほうがよいかと。
上の2モデルが似ている理由は、エラがオーセンティックの進化版だからです。ヴァンズはそもそもスケートブランドではありません。1966年にカリフォルニア州で創業された小さなお店で扱っていたオーセンティックは、ただの運動靴。それが当時のスニーカーの象徴であるデッキシューズ風だったこと、さらに安くて頑丈なことが若者に支持されました。
サーフィンの立体的な感覚を応用したスケートは、陸の移動手段から“魅せる”を楽しむカルチャーへと進化します。より丈夫でクッション性が欲しいという多くの要望を受けて、ヴァンズ側の提案でパッド入りのERAという初めてのスケートシューズが誕生しました。
エラはヒールの内側に生地を当てているため、それに沿ったステッチが。オーセンティックは上履きのように中央に2本施されている。
パッドのないオーセンティックはステッチが履き口のすぐ脇を走る。対してエラはパッドの分だけ下にあるのでカジュアルに見える。
現行は2モデルともにこのワッフルソールだが、これはエラが誕生した際、スケートやBMX用にグリップを高めるために初採用されたもの。
ヴァンズの営業担当者に聞くと、国内での一般的なイメージは「オーセンティック=玄人、エラ=万人ウケ」で、それが売り上げに反映されているよう。特に“私はヴァンズを履いている”さえクリアすればOKな女性の多くは、履き心地と脚が細く見えるボリューム感でエラを選びがち。オーセンティックを履くとサザエさんのキャラクターみたいに足が小さく見えるので、多少の気遣いが必要です。
色褪せたネイビーのオーセンティックをローファーソックスなどで素足風に履く人は、とても西海岸的で、ヴァンズの世界観に忠実です。一方で黒や白のオーセンティックは近年のベーシック人気の象徴であり、都会的なヴァンズユーザーに見えます。黒いエラに白ソックスを合わせる人はスケートとしてのヴァンズを「わかってる」系。なんとなくUOMOらしい履きこなしとなると、この3つに大別されるのではないでしょうか。ご参考まで。
Illustration:Yoshifumi Takeda
Text:Masayuki Ozawa
(2017年3月号掲載)