“東京スニーカー氏”ことエディターの小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月イチ連載。今回は、ファッション的な視点から見た白&黒スニーカーについて。
US企画のハイトップはやや幅広でトウまわりが薄めのシルエット。どことなくスタイリッシュだ。スエードにはスイスのHeiQ(ハイキュー)社による撥水加工が施されているため、汚れや小雨から白を守ってくれる。ちなみにシュータンのラベル裏にはハイキュー社のロゴが。スニーカー¥12,100/ヴァンズ(VANS JAPAN カスタマーサポート)
今回は、ファッション的な視点から見た白&黒スニーカーについて考えてみたいと思います。基本的に熱量がファッション>スニーカーの人は、真っ白とか真っ黒とか、服に干渉しない色の足元を好みがち。ですが僕にとって白スニーカーと黒スニーカーは似て非なるもの。例えば黒やネイビーやグレー、つまりシンプルなトップス&パンツを着るとき、白スニーカーは服の存在感をアピールする靴であるのに対し、黒スニーカーは服のよさを支える靴というか、どちらも無味無臭でありながら、その役割や関係性はかなり違うものだと思っています。
話変わって、白い足元って、地味ながらに存在感を主張しがち。そして清潔とかヘルシーとか、ポジティブなプレゼンスをしている。だから服がスポーティじゃないと全体がシンクロしにくい。テック生地のジャケパンとか、ショーツスタイルに合わせる人が多いのも、うなずけます。ヒップホップのアーティストやベンチャー企業系の社長が白を選ぶ理由も、見た目の印象こそ真逆ではありますが、根底にある「白=神聖なもの」というイメージは同じかもしれません。
6年くらい前に通勤スニーカーが話題になったとき、当時のスポーツ庁長官と対談をしました。そのとき、僕はツイードのスーツに真っ黒のスタンスミスを合わせて、革靴っぽさを表現したつもりでしたが、長官はスーツに白スニーカーでした。日本を代表してコントラストをきかせて、足元とスーツをともに引き立てている、そんな印象を受けました。ですが、スニーカーブームも当時ほどの勢いがない今は、僕も引き立て役としての白を選ぶことの新しさを感じなくなり、次の一手を模索していたところ、いい出会いがありました。
最近、ファッションのトレンドにクワイエット・ラグジュアリーというキーワードが出てきました。2010年代半ばに流行したミニマルファッションに、上質さやモード色を加えたスタイルで、足元だけ見ればノームコア~ダッドシューズからの揺り戻し現象ともいえます。ただ今回のトレンドの主役は革靴。スニーカーならどうする?と考えたとき、タイムレスで控えめなアプローチが浮かびました。そんな中、VANSにリースに行ったときに白のスケートハイを発見したんです。これはアッパーにピッグスキンを使っていて、洗練されている。ほかの同モデルと比較できないのですが、これはUS企画だからか、履き口のパッドが分厚すぎなくて履きやすく、ボトムに干渉しない気もしています。そして何よりこの白は服をアピールするためではなく、不思議と黒スニーカーと同じ脇役としての匂いがあるんです。これならカルチャーの匂いも表現できるし、着こなしが(いい意味で)明るくならない。なんか、こう時代に媚びてない感じにすごく惹かれるんです。今さら清潔感をアピールするより、若作りせずに等身大の枯れ感をポジティブにとらえたい。スニーカーも45歳らしい視点で選びたいです。
Photos,Composition&Text:Masayuki Ozawa