“東京スニーカー氏”ことエディターの小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月イチ連載。今回は、玄人好みのマイナー路線なモデル「WAVE EVOKE GTX」をベースにした、ミズノとマーガレット・ハウエルの防水スニーカーについて。
モデル名はMIZUNO PULL ON WALKING SHOES。前作に比べて、一体化された履き口やシューレースの設計がスマート。ヒールに浮かび上がるMIZUNO ランバードマークはコラボレーションの証しでもある。黒とカーキの2色展開で7月下旬発売予定。スニーカー¥30,800/ミズノ フォー マーガレット・ハウエル(マーガレット・ハウエル)
通勤などはさておき、靴が水没してズブ濡れになるほどの雨の日にわざわざ外出する機会って減っているし、メッシュ素材はさすがに要注意ですが、いわゆる普通のレザースニーカーであれば、都会でそこまでの水被害には至らないと思います。それでも不思議と防水スニーカーが欲しくなるんです。
では、どんなスニーカーを求めているかというと、プロダクトとしての専門性でしょうか。つまり防水性以外のデザインやテクノロジーが、ちゃんと雨と結びついているかどうか。最近は定番モデルにゴアテックスって発想が増えていますが、そういったマルチパーパス感より、悪天候に特化したデザインに頼りたい。もし完全防水の白シャツとかタートルネックニットがあっても、僕は雨から身を守るために設計されたポンチョやレインコートが着たい。その視点で選ぶとやっぱりアウトドアブランドのシューズにたどり着きます。過去にはモントレイル、サロモン、イノヴェイト、ホカ、ナイキ ACGなど、いろいろな防水素材のトレッキング系スニーカーを履いてきました。あえて山で選ばれる名品の、それらしいカラーを足元にポイントとして取り入れるときもあれば、オールブラックの都会的なカラーを馴染ませるときもありますが、最近はミズノ×マーガレット・ハウエル(以下ハウエル)ばかりです。
両者の取り組みは2017年からスタートしましたが、ミズノのスポーツに対する真面目さと、ハウエルの気品の混ざり気具合って、実はすごく独特なんですよ。ミニマルでトーンが落ち着いているとなんでも「今っぽい」と形容されがちですが、その道の優等生と優等生が一緒にもの作りしたら、狙わずともこうなるよな、って雰囲気。ゴアテックスを使った2足目のモデルは、展示会で見てオーダーしました。ベースはミズノのウォーキングシューズ、WAVE EVOKE GTX。前作同様、ファッション系のお店では取り扱われないマイナー路線なモデルをチョイスする玄人さが僕好み。MIZUNO WAVEという独自のクッション性能やスリップ防止のグリップソールなど、使っている機能レベルはかなり高いけど、ちょっとおじさんっぽい。しかしそこにハウエルらしい素材とカラーが入ることで、なんともいえない上質な薫りに包まれました。
ハイプな価値基準とは別のところにあるスニーカーにどんな価値を付加できるか。UOMO読者にとって大切な足元の選び方の話ともつながります。基準はいろいろあるのですが、まずは無味な佇まいにどこまで心地よさと高揚感を得られるかが大切かと。まさにミズノとハウエルのコラボはそんな存在。7月末の発売なので梅雨は明けてしまいますが、夏の雨はもちろん一年中ヘビーローテーションできそう。唯一の悩みは、万能すぎてほかのシューズが履けなくなってしまうことでしょうか。足元を安定させて、ファッションが停滞しないよう、まずは同じくハウエルの秋冬もので気になっていたジャケットを着たいです。
Photos,Composition&Text:Masayuki Ozawa