2023.01.01

【ナイキ エア トレーナー1】スニーカー好きがテニス初観戦で思ったこと【教えて! 東京スニーカー氏】

“東京スニーカー氏”ことエディターの小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月イチ連載。今回は、クロストレーニング用に開発された記念碑的モデル、ナイキ「エア トレーナー1」について。

【ナイキ エア トレーナー1】スニーカーの画像_1
ナイキ_エア トレーナー1_テニスシューズ

走る、跳ぶ、はねるなどの複合的な動きを楽しむクロストレーニング用に開発された記念碑的モデルがAIR TRAINER I。日本でもグッドデザイン賞を受賞するなど、コンセプチュアルなデザインが評価された。この配色はデザインを担当したティンカー・ハットフィールドが通っていたフィットネスジムからインスパイア。私物



先日、人生初となる生テニス観戦を経験しました。楽天ジャパン・オープン・テニス選手権の男子決勝、ダブルスとシングルスの2試合を間近で見て、少しテニスの魅力を知った気がします。プレー中は静かに。ボリボリと音が鳴るせんべいやスナック菓子はご法度です。そして声を上げず気持ちは拍手で示す。この高潔な雰囲気と、プレイヤーのスピード感や気迫とが混じる感覚が、けっこう心地よくて。テレビで見るより、ずっと楽しい時間でした。テニスはまったくの素人ですが、見る専としての知識を蓄えようと思います。今大会は国内では最高峰の階級となるATP500で、シングルス決勝で惜しくも負けてしまったフランシス・ティアフォーのインタビューパフォーマンスがユニークでした。



 さて、今年買ったテニスシューズといえばNIKEの「エア トレーナー1」です。厳密にいえば、クロストレーニングという、複数のワークアウトを同時にこなすためのシューズ。1987年に発売されました。当時、名テニスプレイヤーのジョン・マッケンローは、家庭の事情で一時的に離れていたテニス界に復帰するために、ベストなシューズを探していました。そのとき、NIKEが彼に送ったいくつかの新しいシューズの中に、履き古された試作品の「エア トレーナー」が誤って紛れ込んでしまったそう。それを気に入った破天荒キャラのマッケンローは「試作品だから履いて試合に出ちゃNG」との忠告を無視して出場し、そのトーナメントで優勝してしまう。結果、このモデルが話題となって、テニスの世界に足跡を残したのは、有名なエピソードです。その後、マッケンローとアンドレ・アガシが二人で履いて広告塔となったエア テック チャレンジがヒットし、ランニングやバスケと同じく、テニスでもNIKEが業界を牛耳る’90年代へと入りました。ちなみに僕が好きだったモデルは1994年製の「エア フレア」。2015年の復刻のときに買い逃したので、これは是が非でももう一度発売してほしい。アッパーが白ベースで、シュータンと履き口を黒で切り替えた配色センスを真似た「エア フォース1」を、先日NIKE BY YOUでカスタムオーダーしました。



 話は戻りますが、前述したティアフォーが履いていたシューズは、NIKEの「コート エア ズーム GP ターボ」。しかも大坂なおみ選手がデザインした日本未発売モデル。前足部が白、中足部が茶色とグリーン、ヒールがピンクという絶妙なトーンで、スウッシュはブルー。彼女が飼っている愛犬と漫画の『NARUTO』にインスピレーションを得たとか。このウィメンズカラーをメンズが選ぶあたり、センスもユニークです。選手が実際に履いてプレーするシューズが話題になって、そこからトレンドが生まれる。そんな’90年代のマッケンローやアガシのようなストーリーが、現代でも生まれるといいですね。テニスの足元の世界も、いろいろ奥が深そうです。

小澤匡行プロフィール画像
小澤匡行
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。スニーカー好きが高じて『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓。靴のサイズは28.5㎝。

Illustration:Yoshifumi Takeda
Photos,Composition&Text:Masayuki Ozawa

RECOMMENDED