2022.03.25
最終更新日:2024.03.07

アディダス「アディマティック」の復刻が気になる理由【教えて! 東京スニーカー氏】

“東京スニーカー氏”ことエディターの小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月イチ連載。今回はアディダスの隠れた名作「アディマティック」の復刻について。

アディダス「アディマティック」の復刻が気の画像_1
アディダス「アディマティック」の復刻が気の画像_2

今まで復刻が実現しなかったのは、このソールの型が残っていなかったから、という説もありました。ロースーツはミタスニーカーズやタカヒロミヤシタザソロイスト.などで別注歴がありましたがアディマティックは初の快挙。グリーンの色がちょっと薄いけどそれはご愛嬌! スニーカー¥12,500/アディダス オリジナルス(atmos表参道)



最近は、人気モデルのリリースラッシュについていくのに必死で「あのモデルを復刻してほしいな」みたいに切望することも少なくなりました。特にファッション好きのUOMO読者にとっておしゃれは総合偏差値だと思うので、スニーカーは、なんだかんだ得点配分の高い教科な感覚でしょうか。話題性もさることながら、全体のバランスを考えた足元選びにセンスが求められます。



そんな中、久々に’90年代からストリートに身を捧げたおっさん世代にとって、マニアックなビッグニュース(!?)が届きました。アディダスの「アディマティック」の復刻です。オリジナルは1996年。当時はナイキが牽引するハイテクブームの真っ最中でしたが、スケートやスノーボード、BMXなどをひとくくりにしたアーバンスポーツの全盛期。アディダスはそのコアな波にいちばんうまく乗ったメーカーでした。マスの流行に抗っていたストリートの象徴が「アディマティック」で、north waveよりも古着系に愛された、コアな存在だったはず。とにかく雑誌で見ていると、どんどん値段が高くなる玄人スニーカーって印象でした。



その後にそれと似た「ノートン」や「ロースーツ」が発売され、ようやくフォルム、ストライプ、靴ひものすべてがワイドな「ポテッとした設計思想が旬なのか!」と本気で探し始めたんです。当時は直営店もない時代だったので、原宿の並行輸入店か、地元のミナミスポーツとかアルペンとかに探しに行ったけど出会えず、たまたま雑誌の隅に載っていた通販ページを友人が見つけ、電話で注文しました。大きいサイズが27.5㎝しかなくて渋々買ったけど、作りが大きくて安心した思い出があります。ちなみに僕がアメリカ留学に持っていった3足は、DC SHOESの「レガシー」、ナイキの「エア フォース1 MID」、そして白地に黒の「ロースーツ レザー」でした。深緑と水色のラルフのスウェット上下(XXLサイズ)に合わせ、キックボードに乗ってイキって通学していましたが、今思うとアーバンスポーツを地で気取るポーザーでしたね。



「ノートン」「ロースーツ」に並ぶアディダスの三種の神器で、その頂点だった「アディマティック」。しかしその付加価値は日本独自のカルチャーで、海外ではマイナーな存在だったため復刻が実現されなかったとか。しかし僕の長い友人であり、’90sカルチャーの生き字引の一人であるアトモスの小島くんが、アディダスに数年かけて交渉を重ねて復刻が実現したのです。彼が働いていた、今はなき並行輸入店のチャプターでも、’90年代は欧州から買いつけて売っていたそう。人気モデルが固定されがちな、クラシックなアディダス市場に新風を送り込めるか。僕よりちょい上のアラフィフ世代がズバかと思いますが、このフォルムとマニアックなストーリーは、若者ウケもよさそう。国内の発売は3月26日予定。アディダス各店とアトモスだけらしいので、激しい争奪戦が予想されそうです。

小澤匡行プロフィール画像
小澤匡行
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。スニーカー好きが高じて『東京スニーカー史』(立東舎)を上梓。靴のサイズは28.5㎝。


Illustration:Yoshifumi Takeda
Photos,Composition&Text:Masayuki Ozawa

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