“東京スニーカー氏”ことエディターの小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月イチ連載。今回はコラボレーションについて。
ナチュラルなオフホワイトはOAMCのオンラインのみの限定カラー。サンバのOGは薄いガムソールですがこの「Type O-8」はフラットなコートソールで、ストリートライクにアップデートされています。アッパーのレザーも上質。¥28,000/アディダス オリジナルス バイ オーエーエムシー(アディダス ファッション グループ ショールーム)
OAMCのクリエイティブ・ディレクター、ルーク・メイヤーの着こなしをSNSでチェックしたり、彼の哲学などが語られたインタビュー記事をサイトや雑誌で探す行為は、僕のちょっとしたライフワークになっています。2019年にローンチしたアディダス オリジナルスとのコラボレーションは3シーズン目に入りました。毎回どんなスニーカーがアップされるかが楽しみで、特に最新のコレクションが気に入っています。
OAMCを知ったのは、とあるセレクトショップの展示会で「これはイタリアのシュプリームです!」と前のめりに紹介された6年前。当時は商品単体で見ていたので新手のストリートブランドかな程度にしか思いませんでしたが、パリでコレクションを発表するようになってから世界観が好きになりました。それまではストリートウェアにラグジュアリーな要素をふりかけた、セレブが好むイケイケなムードが苦手でしたが、OAMCや夫妻で手がけるジル サンダーはその逆で、ラグジュアリーなものづくりに、若い頃に吸収したストリートを注入している。だから氏の着こなしも上質なベーシックウェアがベースで、足元にナイキの真っ白なエア フォース1やエア ジョーダン1をさらっと合わせるといった、ストリートとラグジュアリーの隙間をスタイルのセンスで埋める感覚に共感しました。作り出すプロダクトもキャッチーとは言い難く、ハイプな存在になりにくい。ものづくりへの理解を深めてから買える猶予を与えてくれるところも気に入っています。
アディダスとの最新のコラボレーションはまさにその象徴といえます。合成素材の機能性と天然素材の物質性がもたらすコントラストが基本的なコンセプトで、今回は2モデルが発売されました。一つは春夏にデビューした「Type O-5」の新色で、これは1998年の知る人ぞ知るトレイルランニングシューズ「EQT ティラニー」をヒントにしたもの。もう一つの「Type O-8」は、’50年に誕生したフットボール向けの多目的シューズ「サンバ」のレトロ感を残しながら、上質な素材でアップデートしています。ストリートでピストブームが訪れた15年ほど前、サンバの薄いゴム底のグリップ力やトウカップに収まりのいい先細ったトウのフォルムが注目されました。ルーク・メイヤーのようにスケートやメッセンジャーなどの自転車カルチャーに精通している人にとって、サンバはアディダスの中でも特別なモデルに映っているはずです。
「今」を大切にした、現代の美学とイノベーティブな技術の調和がOAMCの、ルークのフィロソフィだそう。派手な装飾に頼ることなく、素材やカラーで本質を追求しているこのコレクション。40歳男子がたどり着いた大人ストリートを、足元にフォーカスしすぎず、トータルルックで体現してみたいです。ハイゲージのタートルネックニットにテックアウターのミックス感が、僕の気分です。
Photo,Composition&Text:Masayuki Ozawa