2024年に発売されたアディダスのスニーカーの中から、東京スニーカー氏ことエディターの小澤匡行さんが注目のモデル6型をピックアップ。どれも大人の着こなしにマッチする秀逸なデザインとなっている。
01:adidas originals for ÉDIFICE/IÉNA|GAZELLE INDOOR
上質なレザーにも心惹かれるバランスのいい別注
「エディフィス/イエナ別注のガゼル インドアです。ガゼルといえば90年代のジャミロクワイが愛用していたスニーカーというイメージですが、僕も当時から2000年頃までよく履いていました。このガゼル インドアは文字通り室内用につくられたスニーカーで、トウの切り替えが通常のガゼルとちょっと違います。
ガゼル インドアはTパーツをトウ全体にスッポリかぶせた、むしろサンバに近いデザイン。些細な違いでも、このトウの補強パーツはデザインの印象を大きく左右します。僕はどちらかというと、このかぶせているデザインがいいなと思っていて、黒×銀もクラシックなアディダスやプーマが好きな人には響く配色。最近、エディフィスではこのカラーパレットの別注が増えています。ファッションとスニーカーカルチャー、双方のアプローチができていて、僕にはとても万能な一足です。
シボ感のある上質なソフトシュリンクレザーを使っているところもエディフィス/イエナの別注らしいし、トウとヒールの補強を厚めのスエード素材にしたり、通常は配色のヒールパッチをボディと同色にするなど、バランスもとてもいいと思っています」(小澤)
02:adidas Originals|JABBAR LOW atmos
ヴィンテージの文脈で履きたい復刻バッシュ
「この秋、アディダスが推しているモデルのひとつがジャバーです。ホワイト×ブルーアッパーのスムースレザーのハイカットとローカットも復刻されますが、アトモス別注でスエードバージョンのローカットが登場します。僕の記憶だとジャバーが最後に復刻されたのは、もう20年くらい前…2004年頃だったでしょうか。ヴィンテージマニアには受けがいいのですが、ストリートの文脈があまりないので、単純に復刻するだけだと広がりが少ないんですよね。
アトモスのコラボレーションではアーカイブからブルースエードを選んで、ヴィンテージスペックでつくっています。毛足の長さにもこだわっていて、かなりレベルが高いと思いました。この古着感を活かして、いい古着をミックスしたモダンなコーディネートに合わせたら映えるのではないかと。
ヴィンテージスニーカーブームのときには、フランス製ジャバーやトップ10もかなり価格が高騰していた記憶があります。でも裏原的なストリートの文脈はないモデルでした。だから僕の中では“スター選手が履いていたヴィンテージの靴”という解釈なんですよね」(小澤)
03:adidas Originals|COUNTRY JAPAN
日本でつくられていたカントリーをリスペクト
「アディダスの中でカントリーはあまり履いてこなかったんですよね。高校生の僕には白×グリーンのあの王道の配色を履きこなすのが難しかった。理想としていたヴィンテージデニムの雰囲気にも合わず、敬遠していました。唯一持っていたのが1996年か1997年頃につくられていた日本製のカントリー。購入したのは、もっと後の話ですが。
アディダスが一時期、カントリーやスーパーバスケットといったモデルを日本の工場でつくっていたんです。カンガルーレザーという高級でやわらかい革を使っていたこともあり、スニーカーファンの間では一目置かれるクオリティでした。今はもう、探している人はいないかもしれませんが、その後値段も高騰して。このカントリー ジャパンは、おそらく、そのときの日本製をルーツにしているのだと思います。
つま先のトリムの短さとか土踏まずのえぐれ方、ソールのハの字の型押しや革の余り方も、現行品にしてはちょっとヴィンテージっぽいんですよね。白×グリーンの鉄板カラーではなくて、ベージュ×ブラウンというウォームカラーも僕的にはありがたい。スエードだから上品だし、赤いニットあたりに合わせたいと思います」(小澤)
04:adidas Skateboarding|ALOHA SUPER
マーク・ゴンザレス愛用シューズの最新色
「今ではゴンズ(マーク・ゴンザレスの愛称)といえばアロハ スーパーというイメージが定着しました。このブリックカラーは最新色です。ゴンズとのパートナーシップでこのモデルが登場したのは2018年。もともとは彼が1998年にドイツ・ブラウンシュヴァイクの美術館内でスケートボードをした際に履いていたフェンシング用シューズ adiStar(アディスター)をベースにデザインされたモデルだそうです。
以後、さまざまなカラーで展開されていますが、ゴンズのシグネチャーは安定してカッコよかったり、かわいいものが登場しています。アディマティックのようなスケートシューズらしいスリーストライプスの角度、低重心なフォルムもかわいいですよね。
マーク・ゴンザレスはイラストなどの分野でも評価されているアーティストです。シュータンのマークは、彼が描くアイコンのエンジェルマークとトレフォイルをミックスしたもの。すごくセンスがいいですよね。僕の世代からすると90年代に有名になったレジェンドですが、今もずっと一線で活躍しているのもスゴイと思います」(小澤)
05:adidas Originals|SAMBA LT
カラーリングとレトロなメッシュに惹かれて
「アディダス オリジナルスから発売された、折り返しタン付きのいかにもフットボールシューズ然としたサンバ LTです。ウェールズ・ボナーとの2023年秋冬のコラボでもタン付きが出ていたように、最近はフットボールシューズのディテールが強ければ強いほどいいという風潮があります。
自分はタン付きを履いたことはないんですが、これは水色×茶色というカラーリングに惹かれました。ウィメンズのファッションでは折り返したタンの存在感がコーディネートのアクセントになるんでしょうね。今のサンバブームを牽引するウィメンズのトレンドをうまく表現していると思いました。
もうひとつ僕が惹かれたのがテクニカルじゃない、レトロなメッシュ素材。2000年代ブームを反映した近未来感を表現するためのメッシュも多いですが、レトロに見せる編み込み素材が増えています。こういった素材は今のファッションとも相性がよいので、面白い部分だなと注目しています」(小澤)
06:adidas Originals|STAN SMITH LUX SHINSUKE NAKADA
ファッション視点でスタンスミスの振り幅を広げる
「ビームスのクリエイティブディレクターとして活躍されていた中田慎介さんが監修したスタンスミスです。ドレスシューズをテーマにしているようで、スエードアッパーと同色のソールで革靴っぽく仕上げています。中田さんがクラシックなスーツスタイルや自転車に乗るようなカジュアルセットアップに合わせたビジュアルも公開されているので、ぜひチェックしてみてください。
スタンスミスはもともと振り幅の広い靴ですが、それをファッションの視点でさらに押し広げたのはやはり中田さんのセンスと経験だと思います。取り外しできるキルトや革靴のような丸紐を付けて、ムードを変えられるようにしています。何よりライニングがレザーというのがいちばんのポイントで、僕個人としてはそこにいちばんこだわりを感じました。
ライニングの色をきれいな明るいブラウンにしているのは、2000年前後くらいに好きだったエルメスやシルバノ マッツァのようなラグジュアリースニーカーに通じるディテール。足首からちらりと見える感じがしゃれていて、面白いなと思いました」(小澤)
「足元ばかり見ていては欲しい靴は見えてこない」が信条。近著に『1995年のエア マックス』(中央公論新書)。スニーカーサイズは28.5㎝。
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