“東京スニーカー氏”ことエディターの小澤匡行がスニーカーにまつわるギモンに答える月イチ連載。今回は、ナイキの最新厚底ランニングシューズ「アルファフライ2」について。
本カラーは2023-2024年の駅伝シーズンに向けて発売された、ミスマッチ(左右非対称)カラー。左足は鮮やかなピンクを、右足はボルトカラーを採用して、速さを表現した。おそらく正月のいろいろな駅伝で見られるはず。テレビをつけたら気にして見てください。¥40,150/ナイキ(NIKE カスタマーサービス)
僕が初めてNIKEの厚底シューズを履いたのは、たしか2017年の終わりのこと。翌年の正月に「ヴェイパーフライ」を着用して箱根の山を下って、跳ねるような感覚があまりに楽しくて20㎞があっという間でした。箱根駅伝の出場選手が何を着用して走ったか、というのは毎年業界が注目するところ。2017年のNIKEのシェア率はまだ17%とかだったのに対し、2021年のピーク時は95.7%という天文学的な数値を弾き出しました。2023年は61.9%とほかのメーカーの奮闘ぶりを感じさせるものの、依然NIKE強し、です。
近年、12月になると「EKIDEN PACK」というコレクションのお披露目が恒例行事になり、2023年は駅伝発祥の地である京都でスペシャルな発表会が行われました。開発エピソードをじっくり聞くこともできたし、実際にシューズを履いて高校生ランナーの聖地である西京極陸上競技場のトラックや、鴨川沿いを走ったりも。まさに京都を満喫するランニング出張を楽しみました。
写真の「アルファフライ2」は「ヴェイパーフライ」をさらに進化させた、最上級のレーシングシューズ。とにかく軽くて、とにかく分厚い。本格的な長距離ランナーの筋力と走力がないと履きこなせないと言われていますが、素人レベルでもそのすごさは十分に体感できました。一歩踏み出すたびに、グイングインと跳ねる感じです。今まで厚底で大騒ぎされていたのは、ソールに搭載されているカーボンファイバー製のプレートでしたが、あらためて気づいたのは、ミッドソールのフォーム素材こそが本当のマジックであること。ランニングで重要なのは、エネルギーの反発力。標準的なシューズに使われるEVAというクッション材のリターン率が約60%であるのに対し、「アルファフライ2」に使われているNIKE独自のZoomXフォームのそれは90%近いとか。加えて着地のパワーをソールにどれだけ蓄えられるか、というのも大事なポイントで、その貯蔵能力も段違いのよう。つまりスピードとは、ソールのエネルギー反発力と貯蔵力の掛け算から生まれるのです。
EKIDEN PACKの発売日である12月1日、僕はとある番組の収録で、箱根駅伝の山登り区間を車で走りました。何度も走っているコースですが、あらためて勾配の急な上り坂に圧倒されました。この日の模様は、あろうことか箱根駅伝のレース日(往路)である1月2日にBS松竹東急で放送されるので、ぜひ見てください。この「アルファフライ2」についてもいろいろ話しているはず。とにかく編集でカットされていないことを祈るばかりです。
さて、2024年の箱根駅伝はどうなることでしょう。下馬評では駒澤大学の一強と言われていますが、何が起こるかはわかりません。各メーカーの厚底シューズが選手たちのパフォーマンスを引き出し、レースを盛り上げるゲームチェンジャーになることを期待して、自宅でゆっくり観戦しようと思います。
Photos,Composition&Text:Masayuki Ozawa