宿坊で心を調える
秋葉総本殿 可睡斎

徳川家康が労をねぎらい住職の居眠りを許したという故事から名がついた、歴史ある曹洞宗の名刹。日本唯一の秋葉三尺坊大権現の御真躰を祀り、日本有数の火防霊場とされる。
交通費(東京からの往復):¥18,040
宿泊費:¥9,000
↓
合計:¥27,040
秋葉総本殿 可睡斎
静岡県袋井市久能2915-1
TEL:0538-42-2121(8時〜17時)
https://www.kasuisai.or.jp/
一日目
16時:到着・受付
17時:薬石(夕食)
18時:写経体験
19時:浴司(入浴)
20時:坐禅体験
21時:就寝

夕食は、豆腐や穀物、野菜を使った「松上膳」。殺生や煩悩への刺激を避けた精進料理は、必要最低限の栄養と修行僧の煩悩を取り除く食事となる。

料理にかかわる自然と人に感謝していただく。

詠むと願いがかなうといわれる「十句観音経」を写す。

写し終えたら、最後に好きな願いを記す。今回、「心願成就」と書いた。


坐禅は、修行僧が寝起きする僧堂を囲むように設けられた外単で組む。修行僧や和尚は内部の内単で行う。
二日目
5時:振鈴(起床)
5時15分:坐禅体験
6時:朝課
7時:小食(朝食)
8時:作務(掃除)
10時頃:退室手続き

朝の坐禅。集中力が途切れたら、合掌をして待つ。見回る和尚に警策で右肩をたたかれることで、気持ちを入れ替える。

朝課として、本堂で般若心経を唱え供養する。


御真殿に移り、世界の平和や被災地の復興の祈禱をあげる。

朝食は野菜中心の素朴な粥膳。一口食べると自然と心が落ち着く。

作務の掃除は入り口の階段を担当。隅々まできれいに掃く。


10万坪の境内には、寺を守る烏天狗と鼻の高い天狗が佇む。
お寺に泊まったら穏やかに生きるヒントがあふれてた
せわしなく不規則な生活を送るライターの力石(43歳)はここ数年、「日常とは異なる静謐な時間に身を置くことに、心と身体を調える手がかりがあるのでは」と、坐禅や写経などを体験できる宿坊が、気になっていた。宿坊とは、その土地を訪れた僧侶や参拝者が泊まるために設けられた、お寺や神社に付属する宿泊施設のこと。現代では一般客も泊まることができ、禅寺では僧侶が行う坐禅や朝のお勤めに参加、体験することも可能だ。今回満を持して訪れたのは、静岡県袋井市の「秋葉総本殿 可睡斎」。1401年、室町時代初期に開山され、徳川家康との深い縁をもつ曹洞宗屈指のお寺だ。
一泊二日のスケジュールは1時間ごとに規則正しく進められる。体験の時間に雲水さん(修行僧)が呼びにくるたびに背筋が伸びて気が引き締まる。一日目は夕食の精進料理から宿坊体験が始まる。豊富な献立はどれも地元でとれた旬の食材を使っていて、素朴な味わいは身体に染み渡る。一つ一つ嚙み締めながら、久々にゆっくりと食事をした気がした。続いて「十句観音経」の写経。十句・四十二文字の経典を写す中で、集中するのが好きだとあらためて自覚。入浴を挟み、夜の坐禅体験へ。ここで「調身・調息・調心」を教えてもらう。身体、呼吸、精神を調え、頭に浮かぶあれこれを放っておく。戻らない過ぎた時間や定かではない未来ではなく、今に焦点を当てることを学んだ。悩みの多くは後悔や不安だったりする。それより今を生きることが大切だと思えた。なんて贅沢な時間だ。不思議と21時には眠くなり、床についた。
二日目は朝4時30分にパキッと起床、5時15分から約20分の坐禅。ご本尊の聖観世音菩薩が祀られている本堂に移り、厳かな雰囲気の中、般若心経を読み行う供養に参加する。続けて秋葉三尺坊大権現の御真躰がある御真殿で、これまでの災害や事故からの復興や世の平和を願い祈禱。先ほどとは異なり、鐘や太鼓を大胆に打ちながらお経をあげて魔や厄を払いのける。その迫力は圧倒的。朝の粥膳をいただいたら、最後の体験である作務を行う。お寺ではきれいなところも、さらに隅々まできれいにする気持ちで掃除をする。それは生活の中で、細かいところまで気を配るという意味があると聞いて激しく納得。あっという間に感じた宿坊体験を終え、満ちた感覚を味わえる今に感謝して、可睡斎を後にした。