【ライフスタイル編】40代をもっと楽しむための「2025年 センスのいい大人のお金の使い方」
家族やパートナーと過ごす日々の中で「自分だけの空間」や「一人になれる時間」が、いかに贅沢であるかを知る40歳。誰にも邪魔されない自分の領域=「聖域」をつくることで、家族との時間も一人の時間も相互にありがたみが増して暮らしは豊かになっていく。
聖域について考えるとき、真っ先に頭に浮かんだ風景があった。2024年9月末に京都で見た「聴竹居 かみ添による紙のしつらえ」という展示。それは趣のある日本邸宅にて京都の唐紙の名店「かみ添」の店主、嘉戸浩さんが手がけた空間のインスタレーション。静かな茶室で和紙が光をやわらかく反射し、同時に紙の張りが生む緊張感が心地よかった。
その空間をつくった嘉戸さんと話したいと思い、11月に初めて京都のかみ添を訪れた(写真)。戸を開けた途端、ほのかにいい香りがした。「いつもフレグランスオイルを雑巾に垂らして拭き掃除をしているので、その香りかもしれないですね」と嘉戸さん。聞けばFRAMAのST.PAULSという香り。もと理髪店だった店内には便箋などの商品も当然置かれているが、趣味のアート作品や家具がさりげなく彩りを与えている。同じくFRAMAのスチールチェアの上には自身の作品が飾られていた。「和室に無機質なモノって実はすごく相性がいい。紙は平面なので、香りや立体物が空間構成に重要なんです」。晴れた午前、聴竹居同様、和紙が光をやわらかく反射していた。家族と暮らす自宅とは別に一人でお客さんを迎えるこの場所は嘉戸さんにとっての「聖域」。それは明かり、香り、家具、アートなど複合的な要素がつながってつくられるものなのだ。
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