2023.12.15

【大人のサウナ&銭湯愛】作家・爪 切男「遠くの銭湯よりも近くの銭湯を愛する」

お風呂。それは男たちにとって癒やしを超えたワンダーランド。過熱するサウナブームに、老舗の町銭湯のリノベーション、大型スーパー銭湯の進出…われわれを取り巻く“浴”環境がダイナミックに移ろいつつある中、どうお風呂と向き合うのが正解なのか? サウナ&銭湯に魅せられた大人たちの変わらぬ、お風呂愛の告白。どうぞご湯っくりお楽しみください。

【大人のサウナ&銭湯愛】作家・爪 切男「の画像_1

遠くの銭湯よりも近くの銭湯を愛する
爪 切男(作家)

昭和湯SHOWAYU

昭和湯

お湯は井戸水を薪で沸かしたもの。ヒノキサウナ室と水風呂も評判。「懐メロや昭和歌謡をずっと流しているのも好き」。

東京都中野区野方1-21-1
TEL:03-3385-3886
営業時間:15時〜24時30分
定休日:土曜


 銭湯とサウナを愛し、多いときは週に5日通っていたという爪さん。
「上京してからずっとですけど、銭湯は実家的な感じがあるというか、安心できる場所なんですよね。服、責任、建前と人間って普段からいろんなものを身にまとって生きているけど、銭湯に行って裸になってしまえば、その間だけはゼロになる。一時の幻なんですけど(笑)、そうやって気楽になれる場所が僕にとっての銭湯なんです」
 ゆえに、昨今の過熱気味ともいえるブームにはあまり乗り切れないとか。
「メディアで紹介されるようなところばかり行って、得意気にしている人はちょっと違うんじゃないのかなって。僕、Jリーグが始まったとき、中学生だったんですけど、近所に少年サッカーの監督をやっているおじさんがいて、サッカーを普及させようと無料でサッカー教室を開くようなかっこいい人だったんです。でもJリーグが始まった瞬間に、顔にペイントを塗ってカズダンスとか踊りだして、サッカーを好きじゃないやつは遅れてるとか偉そうなことを言う人になっちゃってがっかりしたんですよね。何かを好きでいることって、実は誇れることではなくて、考えようによってはちょっと恥ずかしいことだと思うんです。そのことを忘れてはしゃいでいる人が多い気がします」
 大事なのは、遠くの銭湯よりも近くの銭湯だという。
「近所の銭湯を愛せない人は、ほかの銭湯を愛す資格はないんじゃないかなと思います。遠くの銭湯にも出かけるけど、普段は近所の銭湯に通っているという人が個人的には好きだし、信用できるので、僕も引っ越すたびに近所の銭湯を探します。以前暮らしていた中野区でよく行っていたのが昭和湯です。すべてにおいて過不足なく、ちょうどいい感じで、通うには最高の銭湯でした。いつでも裸になれる気楽な場所が近くにあるのはとても素晴らしいことだと思うんですよね」


KIRIO TSUME1979年香川県生まれ。2018年、『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)でデビュー。「午前三時の化粧水」(集英社よみタイ)、「燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!!」(週刊プレイボーイ)を連載中。プロフィール画像
KIRIO TSUME1979年香川県生まれ。2018年、『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)でデビュー。「午前三時の化粧水」(集英社よみタイ)、「燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!!」(週刊プレイボーイ)を連載中。


Interview&Text:Masayuki Sawada
Illustration:Masaki Takahashi

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