2024.06.01
最終更新日:2024.06.01

【瀬戸内なのに巡らない】広島・大竹「シモセ アート ガーデン ヴィラ」は大人のためのテーマパーク【自分勝手な週末旅】

世界で活躍する建築家、坂茂が建築だけでなく家具や空間まで手がけた、ヴィラ、レストラン、美術館が一体化したアート・オーベルジュ。もはや大人のためのテーマパークだ。

広島・大竹|SIMOSE ART GARDEN VILLA(シモセ アート ガーデン ヴィラ)

壁のない家

壁のない家

すべての壁をなくし、ガラスの引き戸型の全面窓で囲まれた開放的な空間が魅力の建物は、1997年に軽井沢に建設された初作をアップデートした約115㎡の作品。内と外の境界線が曖昧で、海や空とつながる浮遊感に驚く。

エミール・ガレの庭

エミール・ガレの庭

アール・ヌーヴォーを代表するガラス工芸家、エミール・ガレの作品に登場する草花を中心に、瀬戸内の気候に合わせて植栽された庭園。

下瀬美術館

下瀬美術館

坂茂が瀬戸内海の島々から着想を得た水盤の上に浮かぶ、広島の造船技術を活用した8つの可動展示室。ライトアップされると幻想的。

壁のない家からの眺望

壁のない家からの眺望。正面には世界遺産・厳島神社でお馴染みの宮島が。コンテナ船とのコントラストが瀬戸内らしい風景。

可動展示室内

カラフルな可動展示室内はミニマルなホワイトキューブ。6月30日まで特別展『開館一周年記念 加山又造―革新をもとめて』が開催中。

シモセ フレンチ レストラン

シモセ フレンチ レストラン

ディナーコース(3品¥13,500、4品¥18,000)より、広島神石高原和牛フィレ肉のグリル。
TEL:0827-93-1700(レストラン予約)

キールステックの家 E

キールステックの家 E

水辺のヴィラに立つ特徴的な断面をもつオーストリアの木造素材キールステックを壁に使用した約55㎡の棟。5棟すべて趣が異なる。

宿泊者限定の朝食

宿泊者限定の朝食。日本のホテルでは珍しい卵とじのようなイタリア風オムレツやクレープのようなフィンランド風パンケーキが推し。

下瀬美術館の外壁

下瀬美術館の外壁は巨大なミラーガラスで覆われ、瀬戸内の島々や山々が映り込み、建物が風景に溶け込む不思議な感覚を味わえる。

アートに滞在しながら
アートに浸る、雨の週末

 到着すると同時に雨が降りはじめた。普通の旅ならテンションが下がってもおかしくないが、ホテルから一歩も出ないのだから構わない。瀬戸内海はトリエンナーレも含めて何度も訪れているが、浮ついたビーチとは異なる渋さが好きだ。雨音が静寂さを際立たせる。

 食目的で滞在する「オーベルジュ」は全国でブームだが、アートと一体化した宿泊施設は珍しい。シモセ アート ガーデン ヴィラは坂茂が設計したヴィラ、美術館、レストランを丸ごと堪能できる、アートや建築好きの大人にはたまらないテーマパークのような場所。瀬戸内海に面した東京ドーム約1個分の広大な敷地は下瀬美術館を中心に、木立に囲まれた「森のヴィラ」(5棟)と水盤に面した「水辺のヴィラ」(5棟)の二つのエリアに分かれている。1泊目は森のヴィラエリアで最も広い、「壁のない家」にチェックイン。

 噂には聞いていたが、ガラスに覆われた美術館のような真っ白な空間の中央にソファとテーブルがあるだけの超ミニマルな部屋。あまりに開放的すぎて最初は戸惑ったが、過ごしてみて寛げるさまざまな工夫を感じた。まずガラス戸を全開にしても雨が吹き込んでこない屋根の設計、樹木の茂る高台にあることでほかの宿泊客の視線を気にさせない配慮、ベッドルームだけには唯一壁がある安心感(バスルームには外から見えないカーテンが引かれている)。眼前には水墨画のように雨の瀬戸内海がおぼろげに広がっている。気になるアメニティはイギリスのバンフォード、同じくイギリスのニールズヤード レメディーズのスキンケアセットもついていた。ミニバーのクラフトビールやワインはすべてインクルード。早速ひとりで乾杯した。

 落ち着いたら徒歩40秒の下瀬美術館へ。オーナー下瀬さんが所蔵する約500点のコレクション。展示内容でフォーメーションを変える展示室は三方に扉があり映画『キューブ』を思い出した。贅沢な展示手法に見入っているとすっかり夜に。

 夕食は広島近郊で育った肉や魚、有機野菜といった地元の幸を生かしたフランス料理。選択式のコースなので2晩は余裕で楽しめる。オープンキッチンで作られる脂肪分控えめの料理は爽やかで地産地消の素晴らしさを実感。

 ホテルだと滞在中わざわざ部屋を替えることはないが、ヴィラなら2泊目は別の建物に宿泊したくなる。森から水辺に荷物を移して、キールステックの家 Eへ。こちらは前日と趣向が異なり、畳が敷かれた和の空間。森と同じく瀬戸内海に面しているが、テラス前には水盤が広がる。玄関の目の前にあるエミール・ガレの庭をしばし散策。ミュージアムカフェでお茶したり、部屋で昼間からお風呂なんて最高か。

 結局、滞在中は晴れなかった。でもちっとも残念には思わなかった。大人の「こもり旅」には雨が似合う。

シモセ アート ガーデン ヴィラ

東京からは岩国錦帯橋空港の利用が便利。主要な空港や駅からの宿泊ゲスト送迎サービスあり(要予約)。詳細はartsimose.jpにて。
広島県大竹市晴海2-10-50
TEL:0120ー907ー090
チェックイン15時、チェックアウト11時
1泊1棟(夕・朝食付き)¥150,000~
インスタグラム:@simose_artgardenvilla

※掲載情報は2024年4月時点のもので、予告なく変更される場合があります。

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