約20年後にはいま働く会社で定年を迎える人も多いであろう40代。そして自分が本当にやりたいこととは? について自問自答する人も多いであろう20代。そんな大人たちに向けて「これからどうする、俺!?」のヒントになるお話。
ITベンチャー ▶︎ 引退競走馬支援 TCC Japan 代表 山本高之さん
馬とともに社会を豊かにし、地域力を高めていきたい
馬とのサステナブルな共生社会を目指す
JRAのトレーニングセンターがある滋賀県栗東市。TCC Japan代表の山本高之さんは、馬のまちとして知られる栗東を拠点に、引退競走馬の支援活動や馬を活用したホースセラピーなどの社会活動に取り組んでいる。
山本さん自身、栗東で生まれ育ったが、馬とは無縁の生活であった。学生時代から漠然といつかは自分で事業をしてみたいと考えていたため、大学卒業後は経営コンサルティング会社に就職。のちに東京のベンチャーに移り、2006年1月に起業した。
「最初は携帯電話向けのコンテンツを企画する仕事でした。ただ、起業はしたものの、ずっと一人経営でしたし、自分が心の底からやりたいと思えるものではなかったこともあって、正直行き詰まりを感じていました。とりあえず起業することが目的となっていて、そこからの広がりがなかったんです」
転機は2011年。東日本大震災の復興ボランティアに参加したことだった。地域の力がとても重要だということを実感し、自らも地元に戻ってまちづくりに貢献できる仕事がしたいと思うようになった。
「あらためて栗東を見たとき、世間的には馬のまちですが、地元では競馬はギャンブルのイメージが強く、ネガティブにとらえている人も多かった。そのギャップがもったいなくて、馬を地域の資源として活用できないかと考えたんです。妻が元騎手の福永祐一さんの妹で理学療法士をしていることもあって、馬を活用したホースセラピーの話を聞いていたのも大きかったです」
まず取り組んだのは、障がいのある子ども向けにホースセラピーを取り入れた放課後等デイサービス。翌年には、引退競走馬を支援する「TCC引退競走馬ファンクラブ」もスタート。
「競馬を引退したサラブレッドたちの行き先や活躍の場が十分になく、残念ながら廃用になっていく馬が後を絶ちません。TCCでは、走れなくなっても乗れなくなっても、人のために頑張ってきた馬たちに寄り添い、人生をともにする仕組みをつくろうと思いました」
この4月には、馬ふん堆肥を活用したカフェ「BafunYasai TCC CAFE」を渋谷区神宮前にオープン。さらに、観光と馬の養老を考えた牧場づくりも計画している。
「大変なことは多いですけど、おかげさまで皆さんに応援してもらうことができて、今はお天道さまに顔向けできているというのかな、胸を張って自分たちは社会にとって必要な取り組みをしているという思いがあります」
PROFILE
1979年生まれ。滋賀県栗東市出身。大学卒業後、船井総合研究所、ITベンチャーを経て、2006年に起業。’15年、栗東市に本社移転。引退競走馬を事業で生かす取り組みを展開している。
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Illustration:Rie Kuriyama
Text:Masayuki Sawada