コロナ禍を受け、東京を離れテレワークをする人たちが増えている。だが、なかなか実行に移せないという人も少なくないはず。この連載では移住者たちの実体験を取材。今回は2020年に葉山に戸建を購入して夫婦で暮らすフリーライターの廣田俊介さんの暮らしから移住の可能性を探ってみよう。
廣田俊介さん
ライター・エディター
38歳
妻が就職先を見つけたことをきっかけに葉山へ移住することに
「20年近く暮らした東京に飽きてきたこともあり、新しい環境で暮らしたいと思って奥多摩や山梨の忍野村の物件を探していました。最初は「湘南・逗子・葉山に自営業者が移住するのってステレオタイプだなぁ」と思って意識的に候補から外していたんです。しかし、妻が葉山で就職先を見つけたことをきっかけに「せっかくだから家を買って移住しよう」という話になりました。実際に住んでみると、環境も都内へのアクセスも良く、移住先として人気なのも納得。今では葉山に住むことになって本当に良かったと思っています」
①時間を有効に使えるようになった
都内に住んでいた時は、時間が空いても「電車で出かけるのも億劫だしな…」と結局家でダラダラしがちだったという廣田さん。しかし、葉山に暮らすようになってからは空き時間を持て余してしまうことがなくなったという。
「海にも山にもアクセスの良い場所に自宅を購入したため、暇さえあればふらりと釣りに行ったりトレッキングに行ったりするようになりました。仕事で煮詰まった時も、海辺を散歩するだけでリフレッシュできます。仕事で都内へ行くまでの移動時間が長くなるのが心配だったのですが、電車は100%座れるので読書時間や作業時間に充てられますし、バイクで高速に乗ればドアtoドアで1時間半もあれば都内の全域に行けます。仕事をしたい時は公共交通機関、運転を楽しみたい時はバイクと、都内にいた時よりも移動時間を有意義に使えています」
②新しい趣味が増えた
「三浦半島の丘陵地である三浦アルプスのトレッキングルートが自宅の裏山を通っているので、妻と一緒に山歩きを始めました。他にも、自転車で15分もあれば行ける近くの海でシュノーケリングを楽しむなど新しい趣味ができました。妻と一緒に楽しめるアクティビティをずっと探していたので嬉しい限りです。都内に住む友人が海水浴がてら家族連れで遊びに来てくれるのも新鮮な体験です。現在は、自宅のリノベーションで余った木材でダイニングテーブルを作ったり、庭のウッドデッキを直したりしており、DIYも趣味になりつつあります」
③早寝早起きになった
「葉山に住んで驚いたのが、朝になると日の出とともに一斉に鳥が鳴き出すことや、横須賀から船の汽笛が聞こえてくること。そんな朝が気持ち良くて、自然と早起きするようになりました。東京に住んでいた時は昼頃から深夜まで仕事をしていましたが、葉山に引っ越してからは朝6時頃から机の前に座って仕事を始め、夕食後はなるべく仕事をせずにゆっくりと過ごすようになりました。天気の良い休日はガーデンテーブルを庭先に出して朝食をとるなど、以前は無駄に使っていた朝の時間を有効活用できています。昼夜逆転に近い状態だった都内での生活に比べるとかなり健康的になりました」
④食生活が変わった
都内にいた時は、ほぼ100%外食だったのでエンゲル係数がとんでもないことになっていました。しかし、今は自炊の多い食生活になり、随分と節約できています。月に1回ほど三浦野菜や鎌倉野菜が手に入る農産物の直売所を回ったり、漁港の朝市を物色したりするのですが、買い出しをイベントとして楽しめるようになったのも大きな変化です。他にも、庭で取れた柚子や梅でジャムを作ったり、果実酒を漬けたり、釣った魚を食べたりするなど、プチ自給自足を満喫しています。
⑤将来設計がしやすくなった
「東京では賃貸マンション暮らしでしたが、移住を機に一軒家を購入してリノベーションしました。フリーランスということもあり、住宅ローンを背負うのはプレッシャーでしたが、月々の支払いもかなり低く抑えられていますし、賃貸と違って資産として残るため、逆に以前よりも気持ちが軽くなったように思います。先々までの支払いスケジュールが見えているので、将来設計がしやすくなったのもメリットです。金額のわりに広い家に住めるのも郊外ならではの良さ。今後、子どもが生まれても十分な広さがありますし、整理整頓がしやすく室内が広々と使えます。市街地から少し離れているので、歳をとって車の運転ができなくなった時のことが少し心配ですが、その時には家を売ってまた別の場所に住めばいいくらいに気軽に考えています」