コロナ禍を受け、東京を離れテレワークをする人たちが増えている。だが、なかなか実行に移せないという人も少なくないはず。この連載では移住者たちの実体験を取材している。今回は明石に移住し、東京へ行き来しながら暮らす上田隼也さんのワークスタイルを見てみよう。
上田隼也さん
広告プランナー・プロデューサー
33歳
明石の豊かな環境に魅せられて移住を即決
「東京で勤めていた約10年の間に、6ヶ所の街に住みました。色々な街に興味があり、新しい環境に暮らすことが以前から好きだったんです。そのため、いつかは東京という場所にとらわれず、自分が本当に好きになった場所を選んで暮らしたいと思っていました」
「そんな時、大阪出張のついでになんとなく明石に移住した友人を訪ねたんです。そして、街を巡っているうちに美しい海や美味しい料理に感動し、気付けばすっかりその土地の虜になってしまっていました。その日のうちに物件を探して内見して、結果的に初めて訪れてから2週間後には住居を決めました。結婚を控えていましたが、釣りやアウトドアが好きな妻は思う存分、自然を満喫できる環境を喜び、移住に賛同してくれました」
①気分転換のバリエーションが増えた
コロナ禍で自宅でのリモートワークが続く中、特に平日はどれだけ工夫してもコンビニに行ったり近くの公園にいってみたり、同じような場所で息抜きをする単調な暮らしになってしまう。それに息苦しさを感じていたことも移住した理由のひとつだという上田さん。今では変化に富んだ環境で思う存分にリフレッシュできている。
「朝は近くのコーヒースタンドとパン屋さんに立ち寄って海岸を散歩。ランチを食べた後の何気ない移動もサイクリング気分で心地良いんです。家の目の前で釣りができますし、自転車で5分も走れば温泉施設があります。さらに、近くの海岸では無料でキャンプができるところがある上に、フェリーに乗れば13分で淡路島にも行ける。オーシャンビューの家のベランダから海や夕日を眺めるだけでも心が洗われる毎日です。都会に出たければ神戸や大阪に1時間以内で行けますし、岡山や広島にも気軽に足を延ばせる。行動範囲が大きく広がりました」
②食事が美味しくて選択肢も多い
新鮮な魚介類を味わえるのも、海にほど近い明石の魅力。美味しいお店がたくさんあるので開拓のしがいがあると上田さんは言います。
「とにかく海の幸に恵まれた環境です。新鮮で美味しくて、しかも安い。一人暮らしをしていた頃は自宅で食事を作ることは少なかったのですが、美味しい魚介類が手に入るのでお米を炊くのが楽しみになりました。お店が充実していて、魚介類を使った料理を出す寿司屋や和食屋が多いのはもちろん、おしゃれなカフェやイタリアン、フレンチが多いんです。もちろん明石焼きも最高です」
③友人たちとのつながりが深まった
「東京との距離が離れたことで友人たちと疎遠になるかと思いましたが、むしろ、友人が予定を合わせて遊びに来てくれるようになったんです。すでに13組以上の友人が訪ねてきてくれましたし、共通の知り合いがきっと気が合うからとご近所さんとして紹介してくれることもありました。家に泊まってもらったり、街を案内したりして一緒に過ごすうちに、改めて友人とゆっくり話せる機会が生まれているように感じます。ここ1〜2年の間、コロナ禍で失っていた何かを取り戻せたような気持ちにもなりました。これからは積極的にコミュニティにも関わって、新しいつながりも作っていきたいと思います」
④二拠点生活で暮らしにメリハリが生まれた
「東京までの移動時間は新幹線を使って約3時間半。大変そうと言われることもありますが、僕にとっては大切な時間です。自宅でもオフィスでもない空白の場所と時間を使って、読書をしたり、考えごとをしたりする。それによって生活にメリハリが生まれています。明石と東京の街のコントラストが強くて、今まで気づかなかった景色に気付いたり、街の変化に敏感になったりしたことも二拠点生活を送るようになって良かったことです。街を見る解像度が上がったような感じですね。学生時代を含め15年ほど住んだ東京では見えてこなかった刺激や気付きを、たくさん与えてくれています」
⑤街に愛着を持てるようになった
「街に愛着を持って暮らしたいということが、移住した大きな理由のひとつでした。自分が暮らす街の歴史や文化を知り、地域の人々の人柄を知る。そして、行政の方針がどのように街に反映されているのかを知る。そうしたことを通して、なぜ自分がこの街で暮らしたいと思ったのかを実感でき、より愛着が湧いてくるんです。明石市はこども医療費や第2子以降の保育料、公共施設の入場料などを無料化するなど子育て支援に力を入れており、街でも子供たちが遊ぶ姿をよく目にします。そうした光景を見ているだけで、この街に暮らしていてよかったと実感できます」