コロナ禍を受け、東京を離れてテレワークをする人たちが増えている。しかし、検討はしているもののなかなか実行に移せないという人も少なくないはず。そこで、テレワークを実践している移住者たちの実体験を取材した。彼らのリアルな声をぜひ参考にしていただきたい。今回は、東京から熱海に2020年に移住した会社経営者の磯部洋樹さんのケースをご紹介。
磯部洋樹さん
経営コンサルタント
40歳
妻の実家がある熱海へ移住
「二人目の子供が生まれたタイミングで熱海への移住を決めました。妻の出身地であり、実家のサポートを受けられるため不安はありませんでした。コンサルタント業のクライアントは首都圏にいますが、ミーティングをする際なども、都内に住んでいた時に比べて特に不便さを感じることもありません」
①ビジネスで地域に役立てている実感が持てる
磯部さんは移住後、熱海の企業のコンサルティングも手がける一方、「熱海経済新聞」というウェブメディアの編集長を務めるなど、地域に根ざしたビジネスに取り組んでいる。
「熱海では東京よりもダイレクトに仕事の成果が表れます。例えば、飲食店のプロモーションを行なったところ、目に見えて集客効果が上がり、クライアントにとても喜んでもらえました。また、『熱海経済新聞』では、熱海で新規開業した店舗や新商品などの情報を取材しています。コンパクトな街で、人と人との距離が近いこともあり、自分の仕事が地域貢献に繋がっていることを実感できるのも熱海だからだと思います」
②余計なストレスから解放された
都内に住んでいた時は、知らず知らずのうちにストレスを抱えていた磯部さんだが、熱海に移り住んだことでそれから解放されたという。
「都内ではどこかへ出かけるとなると、満員電車に揺られ、人混みにまみれるのが当たり前。子供と遊びに行く時もベビーカーが周りの邪魔にならないように気を遣ったり、何かとストレスを感じていました。しかし、熱海では都内のような混雑はなく、心に余裕を持って過ごせています。自営のため働く時間も融通が利くので、平日に遠出するなど、充実した時間を満喫しています」
③住環境が快適になった
移住前に物件のリサーチで熱海を訪ねた磯部さんは、あまりに好条件なマンション物件に出会い、その日のうちに契約してしまったという。
「以前は原宿に住んでいました。確かに都会の楽しさはありましたが、1DKで家族で暮らすには手狭なうえ、家賃が高く、景色も良くありませんでした。しかし、今のマンションは家賃が大幅に安くなったうえ、倍近くの広さ。しかも、オーシャンビューで温泉大浴場まで付いています。ベランダに置いたアウトドアチェアに座り、お酒を飲みながら花火を眺めるのが至福の時間です」
④地域に将来性が感じられる
「熱海は昔から観光で成り立ってきた地域です。ですが観光客の数が落ち込み、衰退した街だと言われていました。また、少子高齢化も他の地域に比べて進んでいますし、コロナ禍の影響も大きい。しかし、そうした課題を解決したいという意欲を持った2代目、3代目の若手経営者が増えてきています。
それに、熱海を盛り上げようと新しい取り組みを始める若い移住者や二拠点生活者も集まってきています。熱海には、そうした人たちの想いに共感し、受け入れてくれる土壌もある。このように、まだまだ伸び代のある地域であることも私にとって大きな魅力です」
⑤とにかくメシが美味い!
磯部さんが熱海に住んで味わっている大きなメリットの1つは、食べ物が美味しいということだった。
「熱海は昔から多くの文豪や著名人が別荘を構える地域でした。そのため、舌の肥えた人たちを満足させられる洋食屋や中華料理屋の名店があり、今もその味を楽しめます。また、チェーン店がほとんど無く、個性的なお店が多いのも魅力。何気なく入ったお店でも料理が美味しくて驚かされます。飲食店は観光地価格で多少高めのところもありますが、地元の人向けのスーパーや商店の価格設定はいたって良心的。近所の魚屋で新鮮な魚が安く手に入るのも嬉しいですね」