自宅を愛してやまない男たちの自宅を拝見。ノンネイティブ デザイナーの藤井隆行さんは、葉山に引っ越したら「広さだけじゃなく、時間の使い方も豊かになった」という。
藤井隆行さん TAKAYUKI FUJII
43歳/nonnative デザイナー
神奈川県三浦郡葉山町 200㎡ 夫婦+娘2人+犬
1976年奈良県生まれ。40歳を機に葉山に移住。オン・オフの切り替えがはっきりするようになり、心身ともに「いいことばかり」の生活を満喫中。今年から保護犬トムも家族に。
広さだけじゃなく、時間の使い方も豊かになった
光がたっぷりと注がれるリビング。「唯一無二のソファ」というコーデュロイのL字ソファはトラックファニチャーにオーダーしたもの。レザーのラウンジチェアはボーエ・モーエンセンで、サイドボードはマッキントッシュ。ともにヴィンテージ。
藤井さんが葉山に越してきたのは2年半前のこと。理想的な中古物件を見つけ、すぐにここに決めた。
「もちろんいろいろとリサーチはしましたが内見したのはここだけ。立地や間取り、日当たり、子どもの学校の通いやすさや都心へのアクセスなど、いろんな面でここが理想的だったんです」
玄関を少しとキッチンをリノベーションしただけで、ほぼ手を入れず。フローリングはもう少し明るい色だったが、家具に馴染むようにワックスを塗って深い色に変えた。
「前の家では北欧家具が中心でしたが、この家で最も気に入っている和室に合わせ、イサム・ノグチ、シャルロット・ペリアン、ピエール・ジャンヌレなどの日本にゆかりのあるデザイナーの家具も取り入れたいと思って。畳も家具に合わせて張り替えました」
窓側は2階まで吹き抜けになっていてリビングに光がたっぷりと注がれるのが特徴だが、実は月の動きも計算に入れた設計。窓の左から月が上り、右に沈んでいく。奥の和室が丸窓になっているのは、最もいい時間にそこから美しい満月を眺めるためだ。
「せっかくいい眺めがあるので、テレビを置くことをやめました。テレビを置くとどうしてもリビングの中心点がそこになってしまうので…。おかげでインテリアの自由度が増したし、子どももその生活に慣れて自分たちのために使う時間が増えた。以前よりも豊かな時間を過ごせていると思います」
都心から離れることで広い間取りを手に入れるだけでなく、時間の使い方にも変化が生まれる。むしろ大事なのはそっちのほうなのかもしれない。
リビングに隣接する和室。円形の窓は月を眺めるため設計されたもの。ジャンヌレのラウンジチェアにシャルロット・ペリアンのベルジェスツール。ムートンラグが掛かったNGAPのレザークッションをドッグベッドに。
八丈島から取り寄せたガジュマルの奥にはオートゥルノトゥルスの作品が。
2階のルーフバルコニーから見たウッドデッキと手入れが行き届いた庭。よく晴れた休日はここで過ごすことも多い。
今はあまりジャンルにとらわれず自由にインテリアを選んでいる
リビングにいるとすぐ寝てしまうので(笑)、自宅にいるときは大体ここに座っています」というダイニングルーム。アンティークのテーブルにブルーの布張りが素敵なハンス・J・ウェグナーのチェア。もう一対のチェアはジャンヌレだ。奥様のリクエストで、カーテンはすべてベロアで統一されている。
不思議な形のキッチンの入り口は、リノベーションにあたって最もこだわった箇所。ジャンヌレのスツールにトム・サックスのNASAチェア。トラックファニチャーにオーダーした棚。ジャンルにとらわれないセンスあふれるコーディネート。
もともと黒塗りだった’80年代のYAMAHAのアップライトピアノ。この家のムードに合わせて塗装をはがし、家具に合わせてワックス仕上げに。「上の絵は娘が描いたものです。最近ビリー・アイリッシュにはまっているみたいで。きちんと額装するとそれっぽく見えますよね(笑)」。
サイドボードの上には家族の写真。あえて統一しない額装がいい。
Photos:Yasuyuki Takaki
Composition&Text:Jun Namekata[The VOICE]