インテリアとして石を飾る人が増えている。当然、宝石のような価値もなければ、神秘的なパワーもない、ごく普通の石…。それでも眺め、触れると愛おしい。そんな石に魅せられた2人の男、クリエイティブディレクターの南貴之さんとインテリアショップオーナーの宇佐見透さんに、石について語ってもらった。
Takayuki Minami
「Graphpaper」「FreshService」「ヒビヤ セントラル マーケット」など、多くのブランドやショップを手がけるクリエイティブディレクター。「alpha.co.ltd」代表。
Toru Usami
石川県金沢市にあるインテリアショップ「Cazahana」のオーナー。雑貨や家具、ヴィンテージアイテムの販売をはじめ、住宅や店舗の内装も手がけている。
クリエイティブディレクターの南貴之さんと、金沢市でインテリアショップ「Cazahana」を営む宇佐見透さんは、ともに石拾いが趣味。仲間を集めて「Pick up Stones Club」を立ち上げるなど、各地で石拾いに興じ、集めた石を自宅に飾って楽しんでいる。
南 ベン(宇佐見さんの愛称)と二人でヨーロッパに一緒に買い付けに行ったことがあって、そのときに「石っていいよね」みたいな話で盛り上がったのが石を拾うようになった始まりかな。
宇佐見 ドイツのライン川で一緒に石を拾いましたよね。
南 ベンもそうだけど、なぜ石に興味をもったのかというと、もともと建築とかアートが好きで、昔の建築家や芸術家って、意外と石を拾っている人が多いんだよね。
宇佐見 有名なのは画家のジョージア・オキーフとかね。
南 そう。「おっ、この人も石拾ってたんだ」みたいなところから興味をもつようになって。いちばん衝撃を受けたのは、彫刻家だったJ・B・ブランクのアトリエに連れていってもらったとき。海で拾った石が積んであって、それがめちゃくちゃ格好よかった。
宇佐見 僕は、今だとプロダクトデザイナーのマイケル・アナスタシアデスが気になりますね。彼の作品集みたいな本があって、それを見るとすごくいい石を拾ってる。石の魅力ってやっぱり自然の造形の美しさだと思います。本当にいろいろな形があって、個人的には「なんでここに線が入っているんだろう」とか「いったい何年かけてこんな形になったんだろう」というものが好きですね。とにかく、見ているだけで飽きない。
南 飽きないよね。俺は気に入った石をこのジョージ・ピーターソンのボウルに入れて飾っているんだけど(右ページの写真)、たまに入れ替えたりすると、それだけで印象が全然変わる。
宇佐見 僕も玄関に石を置いているんですけど、並べ替えるだけでも全然雰囲気が変わりますよね。
南 石ってどこにでもあって、それこそ川とか海に行けば死ぬほどある。その中から「これだ!」というのを見つけるわけだけど、それって自分の仕事と通じる部分があると思っていて。だから、石拾いは楽しい趣味なんだけど、実はものを見る目を鍛えるトレーニングにもなってる。
宇佐見 わかります。最近は海外まで買い付けに行けないから、なおさら石拾いに熱が入りますよね(笑)。
大人たちが新たなコトを始めるなら…
Text:Masayuki Sawada
Illustration:Yu Masuko