社員の副業を認めるのはもはや当たり前。最近では副業人材を募集する企業も増えている。バラエティ豊かに進化する副業の最前線を紹介しよう。
副業のプロに聞いた基本のQ&A
副業を始めたいけど、どうすればいいかわからない…。副業事情に詳しい公認会計士の山田真哉さんに教えてもらいました!
教えてくれたのは
山田真哉さん
公認会計士、税理士、芸能文化税理士法人会長
大阪大学卒業後、中央青山監査法人/プライスウォーターハウス・クーパースを経て、独立。著書『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』は160万部を突破。YouTubeチャンネル「オタク会計士ch【山田真哉】少しだけお金で得する」は登録20万人。
Q 失敗したらと思うと、ちょっと心配です…。
A.失敗しても副業レベルなら大した痛手ではありません。
「もちろん副業が大成功して結果的に人生が変わることもあるかもしれません。ただ、最初からこれで人生を変えようと思わないほうがいいと思います。20代であればすべてを懸けて飛び込んでみてもいいですが、UOMO読者のような30〜40代はすでに生活の基盤もあるのだから、無理にリスクを負う必要はありません。何かを始めようと思ったら、まずはリスクの少ないスモールスタートで。その点、副業はピッタリです。仮に失敗したとしても痛手はそれほどないですし、いい人生経験になったと思えばいいのですから。リスタートも簡単です」
Q 副業で収入を得た場合、税金はどうなるのですか?
A.所得が年間20万円を超えたら、確定申告が必要です。
「副業で収入があったら当然、税金の支払い義務も発生します。ただ、会社員の場合、給与以外の所得が年間で20万円以下であれば確定申告の必要はありません。つまり、20万円を超えたら確定申告が必要になります。知らなかったではすまされませんし、申告せずにいたら税が加算されることもあるので、気をつけましょう」
Q 副業することに決めました。まず初めにやることは?
A.就業規則の確認です。副業のマッチングサイトはいろいろあります。
「当たり前のことですが、最初にやらないといけないことは就業規則の確認です。まずは今の会社が副業を認めているかどうかを確認してください。そして、どんな副業があるかの情報収集です。近年は副業需要が多く、副業やフリーランスで仕事を請け負いたい人と、仕事を依頼したい企業を結びつけるマッチングサービスがたくさんあります。スキルや働き方に応じて、いろいろな副業が選べるので、自分の希望に合う仕事を探してみましょう」
Q どんな副業がおすすめですか?
A.何が目的で、どれくらいできるかで変わってきます。
「単純にお金が欲しいのか、人脈が欲しいのか、それともやりがいが欲しいのかで仕事の内容は変わってきますし、副業することになれば間違いなく時間もとられます。なので、何が目的で、どのくらい時間を割けるのかをちゃんと考えたうえで、自分ができる仕事を探すことが重要です。そこが適当だと、ズレが生じてきて、あとで必ずつらいことになります。副業が原因で生活のバランスを崩してしまったら本末転倒なので、まずは目的と時間をしっかりと設定しましょう」
Q 副業をするにあたって、会社をつくったほうがいいですか?
A.個人事業主でよし。会社をつくってもいいことありません。
「会社をつくっても基本的にいいことは一つもありません。設立にお金がかかりますし、税理士を雇ったりするので、少なくとも年間100万円ぐらいかかります。なので、副業からスタートしていずれは起業することを考えている場合でも、まずは個人事業主という形で始めて、それがうまくいったら会社にするのがいいと思います。ビジネスが軌道に乗ってもいないうちから、いきなり会社をつくるのは意味がありません」
副業をはじめた男たちに迫る!
副業にチャレンジする人を応援!
ユニリーバ・ジャパン
400を超えるブランドを190カ国以上で展開する世界最大級の消費財メーカー、ユニリーバの日本法人として1964年に設立。代表的なブランドに「LUX」「Dove」「AXE」「CLEAR」「Lipton」などがある。
誰もがいきいきと働き、学び、自分らしいキャリアを築けるように
働き方や生き方が多様化し、さまざまなカタチで副業を解禁する企業が増えている。中でも、積極的な取り組みを行っているのが、ユニリーバ・ジャパンだ。2017年に社員の副業・兼業を正式に解禁。勤務中に休憩をとって副業の時間に充てたり、副業のための外出先で本業の仕事をしたり、という働き方も可能にしている。
「社員が組織の垣根を越えて多様な人々と働くことで、社員自身の成長や自己実現が図れるだけではなく、ビジネスに新しい視点を取り入れ、イノベーションの創出や組織の活性化にもつながるので、メリットはとても大きいと感じています」(広報・新名さん)
さらに’20年より、外部から副業人材を募集する新しいプラットフォーム「WAAP」(※)を開始。いつでも、どこでも、誰でも同社の副業・インターンシップに挑戦できるようになった。
「おかげさまで大きな反響があり、200名以上の方が応募してくださいました。また、160名以上の方が今後希望するジョブの募集があったら応募したいと登録をしてくださっています」(同)
興味をもった人はぜひ!
〈社員の副業事例〉
社員Aさんの場合
環境保全・地域活性化を目指すベンチャー企業
以前から環境保全・地域活性化を目指すベンチャービジネスの仕事をしており、兼業を前提に入社。副業で培った経験や人脈を生かし、ユニリーバ社内でもシャンプーの量り売りをする新規ビジネスを立ち上げた。
社員Bさんの場合
小中学生向けオンライン学習のサポート
普段は研究開発部門で薬事の業務に従事。以前から小学校高学年向けの民間学童にかかわっていたが、今年1月からオンライン教材を使った学習サポートをスタート。現在、小中学生15人ほどを受け持っている。
最新の副業は地方創生!
生まれ育った故郷、好きでよく遊びに行くあの場所。何かと縁があったり、気になったりしていた地域の企業がひょっとしたらあなたのビジネススキルを必要としているかもしれない。
「社会状況などの変化によって、地方企業の多くが経営課題を抱えています。課題を解決するためには専門的な人材が求められますが、待遇面や知名度において経験豊富な人材の採用が難しく、業務改善やイノベーションが起きにくいのが現状です。一方で、都市部の企業の間では副業解禁の動きが広がっています。『スキルシフト』は、そうした都市部の人材と地域企業を結ぶプラットフォームとして、転職もなく、移住もなくできる地方との新しいかかわり方を提案しています」(みらいワークス 広報・石井さん)
例えば、平日のスキマ時間を活用して地方の中小企業の事業計画を策定したり、帰省ついでに地元企業の業務改善をサポートしたり、週1で社長の右腕になったり…。本業に差し支えない範囲の副業で地域貢献と収入アップが望めるというわけ。
近年の社会状況の変化もあって、リモートワークの普及が進み、地方での副業も無理なく行えるようになった。どうです? あなたのビジネススキルを地域企業にお裾分けしてみませんか。
豪雨災害からの復興をサポート!
2020年7月の豪雨被災地域である熊本県八代市・人吉市・芦北町。地元金融機関、経済団体と協働し、地域企業に副業人材を紹介。
大阪市の中小企業を元気に!
新規事業の立ち上げやマーケティング支援など、ビジネススキルを大阪市のために役立てたい副業人材と企業とのマッチングを図る。
活躍のフィールドは鳥取にあり!
鳥取県内の中小企業が「攻めの経営」に転じていくために、販路開拓やIT化などのビジネス戦略を実現する副業人材を募集。
スキルシフト
株式会社みらいワークスが運営する、地方副業プラットフォーム。自らのスキルを地域貢献に生かしたい都市部の副業人材と、外部人材を受け入れて課題を解決したい地方企業とのマッチングを行う。
Composition&Text:Masayuki Sawada