かつてUOMO本誌連載「The Nyu yoku Times」で、全国の名湯・秘湯を巡ったN.ハリウッドデザイナーの尾花大輔さん。ホンモノを求めて気になる温泉を巡る、楽しくも過酷(?)な旅が6年ぶりに帰ってきた! 年齢を重ね、ライフスタイルも変わったという尾花さん、久しぶりの温泉旅はどうでした?
大分県竹田市
1.クアパーク長湯
モダン建築の歩き湯に、ひなびた野湯。 温泉の楽しみ方はいろいろある
細かい気泡(炭酸ガス)が皮膚表面にびっしり付着する炭酸泉。天然の炭酸泉は全国でも数が少なく、その中でも日本一と評判なのが長湯温泉だ。クアパーク長湯は、2019年にオープンした温浴法療養複合施設。世界的建築家の坂茂が設計したことでも注目を集めている。 「温泉棟の1階は水着で入る混浴のバーデゾーン、2階は男女別の内湯という造り。面白いのは、バーデゾーンにある長さ50mの歩行湯。半屋外になっていて、自然を感じながら温泉の中を歩く珍しい体験ができる。湯量は豊富で、4本ある自家源泉から惜しみなく投入されて浴感も気持ちいい。長期滞在可能なコテージや地元食材を使った自然食レストランもあって、いろいろな角度から楽しめるのも高ポイント。こんな施設はなかなかない。おすすめです!」
開業:2019年 住所:大分県竹田市直入町長湯3041-1 TEL:0120-381-126 宿泊:¥16,000~ 15時IN/10時OUT 日帰り:¥800(バーデゾーン10時~20時30分 ※最終受け付け20時/内湯10時~21時30分 ※最終受け付け21時) 泉質:マグネシウム・ナトリウム-炭酸水素塩泉
大分県別府市
2.へびん湯
“別府八湯”と呼ばれる8つの温泉郷を擁する別府には、三大秘湯として有名な野湯があり、その一つがここ。明礬温泉エリアから山の中へと分け入り、崖っぷちの未舗装路をクルマに揺られながらしばらく進むと入り口に到着。そこから小川のほうへ下ると、対岸に掘っ立て小屋と岩風呂が見えてくる。
「小川沿いに岩風呂が4つ。野湯にありがちな不潔で気持ち悪い感じはなく、温泉を愛する地元の有志の方たちによって清潔に管理されていることがわかる。無色透明のお湯は上流にある源泉からパイプを使って注がれ、すっきりとした肌触り。泉温は体感で38~39度ほどで、小川のせせらぎや鳥のさえずりを聞きながらいつまでも入っていられる。気持ちよく野湯を味わいたいという人はぜひ訪れてほしい」
開業:- 住所:大分県別府市鶴見 TEL:- 宿泊:- 日帰り:¥無料 泉質:アルカリ性単純泉
鹿児島県霧島市
3.霧島湯之谷山荘
あつ湯、適温、ぬる湯と順に 入るのが気持ちよすぎてヤバい!
湯之谷川唯一の源泉を守る一軒宿。5本ある自家源泉は、同じ源泉でありながら、それぞれ泉温や泉質が異なる。ひなびた風情がたまらない木造りの浴室には3つの湯船があり、広い湯船は43度の白濁した硫黄泉、狭い湯船は30度の微炭酸泉、中央の湯船はこの2つが流れ込む混合泉が楽しめる。いずれも加水・加温なしというから温泉好きにはたまらない。
「あつ湯、適温、ぬる湯の三連チャンがヤバいくらいに気持ちよくて、何度も繰り返し入ってしまった。湯船の大きさはそれぞれの湯量を考えて造られているそうで、温泉の扱いに対する湯守のこだわりが感じられる。浴室の雰囲気はどこか神秘的な趣があって、不思議といつまでもいたい気分。このエリアに来たときは必ず立ち寄りたい湯です」
開業:1940年 住所:鹿児島県霧島市牧園町高千穂4970 TEL:995-78-2852 宿泊:¥11,150~ 15時IN/10時OUT 日帰り:¥500(10時~15時 定休日:水曜) 泉質:単純硫黄泉
熊本県南阿蘇村
4.地獄温泉 青風荘.
阿蘇の地で200年以上にわたって湯治客を癒やしてきた名湯。2016年4月に発生した熊本地震、その後の豪雨災害で壊滅的な打撃を受けたが、’21年4月より再オープン。
「連載をやっていた2014年に宿泊したことがあっただけに復活は本当にうれしい。名物のすずめの湯は足元から湧き、加水のない生まれたての状態で浸かることができる奇跡の湯。いちばん新鮮な究極のかけ流し体験は相変わらず素晴らしく、横に新しくできた冷鉱泉との交互浴はやみつきになりそう。温泉も宿も食事も、歴史を受け継ぎながら新しい時代の湯治宿として見事に再生している。感動の滞在でした」
開業:1808年 住所:熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽2327 TEL:0967-67-0005 宿泊:¥30,800~ 15時IN/11時OUT 日帰り:¥2,000(10時~17時 ※最終受け付け15時 定休日:火曜) 泉質:単純硫黄泉、単純酸性温泉
鹿児島県出水市
5.川内温泉 かじか荘
連載以来の再訪。いいお湯は、 何度入っても新鮮な驚きがある
開湯:1754年 住所:鹿児島県出水市武本2060 TEL:0996-62-1535 宿泊:¥6,000~(素泊まりのみ) 15時IN/10時OUT 日帰り:¥300(7時~20時 ※最終受け付け19時30分 定休日:木曜) 泉質:アルカリ性単純泉
大分県別府市
6.別府温泉保養ランド
創業:1966年 住所:大分県別府市明礬紺屋地獄 TEL:0977-66-2221 宿泊:¥6,500~(素泊まりのみ) 14時30分IN/10時30分OUT 日帰り:¥1,500(9時~20時) 泉質:硫黄泉、酸性明緑礬泉
※宿泊料金は、平日に大人2人で1室利用した場合の、1人分の1泊2食の最低料金。
足を運ばないと名湯は味わえない。 貴重な体験だとあらためて実感しました
「6年ぶりに温泉巡りしませんか?」
UOMO編集部からそう声をかけてもらったとき、最初の答えは「ノー」でした。ご存じない読者のために少し説明すると、自分は2013年から’17年まで、UOMOで「The Nyu yoku Times」という温泉連載をやらせてもらっていました。日本は温泉大国といわれるだけあって、至るところに温泉が湧いています。ただ、温泉とひと口に言っても、泉質も効能もさまざま。一般的に源泉かけ流しがいいとされていますが、それだっていろいろな形態がある。調べれば調べるほどその奥深さにハマっていき、旅先でホンモノのお湯を調べて入ることは癒やしだけでなく、どこか宝探し的な面白さもあって、当時の自分のライフワークになっていました。
連載がスタートしてからはいいお湯を求めて全国各地の名湯・秘湯を訪ね歩き、多いときは一日10湯入ったことも。50回に及んだ連載で延べ700湯は入ったと思います。売れっ子セクシー男優ばりの脱ぎっぷりでした(笑)。連載終了後は温泉熱もだいぶ落ち着いて、代わりにスイミングを始め、肉体トレーニングに取り組むようになりました。その間にパンデミックが起き、遠出することが難しくなって、いよいよ温泉巡りが自分にとって癒やしにならないというか、リアリティをもたなくなってきた。それよりもジムで汗を流し、終わったらジャグジーに浸かって、サウナに入る。このほうが気持ちいいし、今の自分のライフスタイルに合った癒やしになっていたのです。
だから、最初は「ノー」だったわけですが、編集部の話を聞いているうちに、ライフスタイルも嗜好も変わった今の自分が再び温泉と向き合ってみるのは面白いかもと思い、誘いにのって6年ぶりに湯巡り旅に出かけることにしました。今回は大分、熊本、鹿児島の3県を巡り、全部で11カ所の温泉に入湯。相変わらずハードでしたけど、お決まりのタオルポーズはちゃんと身体が覚えていました(笑)。
新鮮で個性の強いお湯に久々に浸かって思ったのは、やっぱり温泉のパワーってすごいということ。全身に染み込んできて、湯上がりもずっと身体が温かいし、成分が濃いお湯は湯疲れするから気持ちよく寝られる。いいお湯というのは、実際にその場所に行かないと味わえないわけで、それってものすごく貴重で贅沢な体験なんだなということをあらためて実感しました。温泉ってやっぱりいいですね。また温泉巡りを再開したくなってきました。
Daisuke Obana
1974年神奈川県生まれ。2001年に「N.ハリウッド」をスタート。現在はさまざまなブランドとのコラボレーションや企画にもかかわる。5年ほど前から本格的にボディメイクを始め、毎朝ジムで汗を流し、トレーニング後は風呂とサウナに入るのが日課となっている。
Text:Masayuki Sawada