2022.08.30
最終更新日:2024.03.08

脂肪燃焼には20分以上歩かないと意味がない?【大人が知っておくべきウォーキングの新常識②】

正しい歩き方や痩せる歩き方などなんとなく知った気になっているウォーキングの知識、ちょっと古いかも? 効果的に歩くための新常識を心得よう。

脂肪燃焼には20分以上歩かないと意味がなの画像_1

教えてくれたのは

フィジカルトレーナー 
中野ジェームズ修一

アスリートからビジネスパーソンまで指導。『最大効果のウォーキング』など著書多数。

ウォーキングプロデューサー 園原健弘

ウォーキングプロデューサー 
園原健弘

バルセロナ五輪で50㎞競歩に日本代表として出場。監修本に『ウォーキング100のコツ』。


ウォーキングで痩せたい!

3脂肪燃焼に効果的な歩行速度はどれくらい?

主観的に「ややきつい~きつい」と感じられる速度が目安です(中野)

おしゃべりができなくなるほど無理して速くは歩かない(園原)

「脂肪燃焼効果を高めるなら、“ややきつい〜きつい”と感じる速度が目安。私が普段指導するときは心拍数をもとに速度を設定します。心拍数を測れるウェアラブルデバイスを持っている人は、下のカルボーネン法で運動強度を60〜80%として目標心拍数を計算しましょう。それを保てる速度で歩くと脂肪が効率的に消費されます」(中野)。
息がゼエゼエ切れるスピードで歩くのは、脂肪燃焼には逆効果。「運動強度が80%を超えるとエネルギー源として脂肪でなく糖質がメインで使われます。よって会話もままならないほどの速さで歩いても効果が薄く、その手前の速度を保って数分でもしっかり歩くことを日課にすれば、だんだん脂肪が燃えやすい体質に変わります」(園原)。

カルボーネン法の計算式

{(220−年齢)−安静時心拍数}×運動強度(%)+安静時心拍数

※例えば、40歳の人で安静時心拍数が60拍/分だと、運動強度50%に相当する場合、{(220−40)-60拍/分}×50%+60拍/分=「120拍/分」となる。また逆に運動中に心拍数が120拍/分まで上がっていれば、50%強度の運動ができていることがわかる。


4A30分続けて ウォーキング B一日3回各10分ずつ ウォーキング どちらが効果的ですか?

断然…Bです! (中野)

「一日3回、10分ずつ歩くほうが脂肪燃焼に有効です。その根拠となるのが運動後過剰酸素消費量(EPOC)。運動後には体内で酸素の消費量が増え、しばらくカロリー消費量が高い状態が保たれます。一日30分のウォーキングだけならEPOCは一度きりですが、10分×3回歩けばEPOCが3回起こるので、皮下脂肪をより多く燃やせます。つまり朝の出勤時に10分・昼休憩の間に10分・家に帰るときに10分、集中的に歩けばいい。歩きたいけれどまとまった時間がない、との言い訳はできません(笑)」(中野)。

運動後過剰酸素消費量(EPOC)の概念図

5脂肪燃焼には20分以上歩かないと意味がない?

筋肉量が十分なら10分でも効果アリ!  ただし継続による「慢性効果」を狙うべし(中野)

「有酸素運動は20分以上続けて始めて効果が出るという通説は理論上誤りだと実証されました。動き始めて15分で脂肪が燃える人もいれば、1時間かけても効果が出にくい人もいる。その決定的な違いは全身の筋肉量です。筋肉は身体の中で最も多くのエネルギーを使う器官で、歩いて脂肪を燃やすには一定の筋肉量が必要。また運動には動いてすぐ出る効果(急性効果)と継続により得られる効果(慢性効果)があります。ウォーキングにおいては、前者の一つに、食後に歩くことで血糖値の急上昇を防ぐ効果がある。一方で後者の一つが食後高血糖になりにくい体質になることだと言われています。継続的なウォーキングの習慣づけで慢性効果を狙いましょう」(中野)。

食事後の運動で血糖値を抑える グラフ

6散歩は食後何分後に行うのがいい?

40分後くらいがベストです(中野)

「食後血糖値の急上昇は脂肪合成の一因ですが、ウォーキングでもコントロールできます。食後血糖値がピークを迎えるのは食事開始から30分〜1時間半なので、食べ始めて40分ほどたった頃から歩き始めるのが理想です。人間の身体で糖を必要とするのは肝臓、筋肉、脂肪の3つ。脂肪細胞が糖を取り込むと体脂肪になりますが、血糖値が上がるときに筋肉をたくさん動かし筋肉に貯蔵された糖(筋グリコーゲン)を使うと、摂取した糖質が筋肉に優先的に送られる。結果、体脂肪の増加を防げます」(中野)。

糖質分解図


Photos:Yuichi Sugita[POLYVALENT] 
Hair&Make-up:Narumi Tsukuba 
Stylist:Takeshi Toyoshima  Model:Yuji Matsumoto 
Illustrations:Ryo Kaneyasu[visiontrack] 
Text:Nao Kadokami

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