釣りにハマると、自分に合った好みのスタイルができてくる。川か海か、近郊か遠方か…。心底釣りに魅せられてしまった男たちがごく私的な視点で楽しさを語る。
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釣りにくいギアでも続ける。楽しみは機能だけじゃない
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久戸瀬崇裕さん
(37歳/TEENY RANCH 代表)
釣り歴
バス釣り27年
スポット
千葉や茨城のダム、多摩川
バス釣りの中でもルアーを水面に落とすトップウォーターを好む。水面でバスがアタックする瞬間を見られるのが魅力だ。
20年前、現行品をすべて手放しヴィンテージ釣り具の沼へダイブ!
久戸瀬さんが釣りを始めたのは、少年漫画『グランダー武蔵』の影響から。’90年代後半にムーブメントを巻き起こしたその漫画を読んだ小学生は皆、釣りに熱中したという。久戸瀬少年も、そこからバス釣りにどんどんのめり込んでいった。
「今もそうですが、バス釣りの中でもトップウォーター(水面および浅い水中での釣り)にこだわっています。それは、中学1年生のときに、バス釣りのバイブルとうたわれるムック本『トップにこだわる男たち』を読んだことがきっかけ。その刺激的な内容とスタイルの格好よさに影響されて、トップウォーターの釣りやヴィンテージのロッド、リールを使うことに傾倒していきました」
日本のトップウォーターの歴史をつくった四天王と呼ばれる則弘祐さん、柏木重孝さん、山根英彦さんにバスプロの吉田幸二さんを加えた4名のオールドスクールなスタイルにとにかく心を奪われたという。
「彼らが使っていたのはグラス素材のロッド。現在はカーボン製ロッドが主流で、正直、手返しも悪く扱いにくいですが、それが味。名竿といわれるロッドにはグラスロッドが多いんです。ヘドンのヴィンテージルアー(左写真)もぬた~っとした動きが基本で、相性は抜群。それにアブガルシアのヴィンテージリールを合わせるのが最強の“タックル”だと思っています」
ヴィンテージギアの機能性は、もちろん最新の素材や技術を使ったものには及ばない。が、そこには使いやすさとはまた別の、直しながら長く付き合う楽しみがある。
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1’80年代に作られ、今も名竿と名高いUFMウエダのスーパーパルサー
2’09年製と比較的新しいブライトリバーのビキニ
3柏木重孝氏が’90年代初頭に作ったズイールのチマチマ5
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A金型が進化した’70年代のルアーは一見似ていても動きが違う
Bプラスチックに変わり、耐久性が上がった’60年代のルアー
トップウォーター用のヘドンのヴィンテージルアー。’50年代はルアーの素材としてセルロイドが使われていたため、現存するモデルはセルロイドが溶け、状態が悪いものも少なくない。よって久戸瀬さんは’60年代~’70年代のものが中心。
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’88年製のアブガルシア「3500C」のリール。中央に埋め込まれた、スウェーデン王室御用達のクレストマークが目をひく。
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’84年製のアブガルシア「2500C」は、この年代のモデルにしか見られない、ブランドの旧呼称“アンバサダー”のプレートがついているのがポイント。
Text: Yasuyuki Ushijima