釣りにハマると、自分に合った好みのスタイルができてくる。川か海か、近郊か遠方か…。心底釣りに魅せられてしまった男たちがごく私的な視点で楽しさを語る。
さまざまな釣りを経験して、シンプルなスタイルに戻った
下城英悟さん
(47歳/フォトグラファー)
釣り歴
延べ竿釣り40年
スポット
東京湾周辺
仕事もプライベートも自転車移動が基本。無理なく走って行ける範囲でのんびりと釣りを楽しむことを信条にしている。
延べ竿一本で十分楽しい。ヘン顔魚を釣ることに本気を出す!
長野県で生まれ育ち、祖父から川釣りを伝授されて以来、リールを使わないシンプルな延べ竿の釣りを楽しんできた、フォトグラファーの下城さん。途中、ルアー釣りなどにもトライしたが、延べ竿釣りだけは欠かすことなく続けている。
「休みの日になると、自転車に釣り道具を積んで東京湾に向かいます」
延べ竿釣りは仕掛けもとにかくシンプルで荷物が少ない。いまアウトドア界では超軽量を指すUL(ウルトラライト)が注目されているが、世界中のULガチ勢が日本発祥の延べ竿であるテンカラをリスペクトしているのもそこに理由がある。
最近のお気に入りスポットは「シーバスやアジなど、人気の魚が“釣れない場所”」だという。下城さんが狙うのは、「外道」と呼ばれる、釣り人があまりありがたがらない、ちょっとヘンな魚たち。
「例えば、チチブやギンポなどが釣れて喜ぶ人は少ないけれどユーモアと美しさがあって目が離せないんです」とうれしそうに話す。釣ったら眺めて、放すのが下條さん流なのだ。
「釣れなくても、水平線に浮かぶ船や空港から飛び立つ飛行機をぼーっと遠目に眺める時間も楽しい。道具をあまり持たないミニマルなスタイルにハマる人って意外と多いはず」
釣りの世界には「鮒に始まり鮒に終わる」という格言がある。質素な道具で釣りを始め、多様な釣りを経て原点に回帰するという意味だが、延べ竿釣りは、まさに象徴的な例。近場で天然の魚を相手に、初心者から玄人までこれほど楽しめる釣りはほかにないかもしれない。
東京・神田の老舗、櫻井釣漁具の延べ竿がお気に入り。針にはイソメなど生の餌をつける。「延べ竿は単純な作りゆえごまかしがきかないので、ここは上質なものを。もちろん、最初は安い入門用でも十分楽しめます」。魚のアタリが遠のいたら、『舟に棲む』(つげ忠男)など釣り漫画を手にひと休み。コーヒーをいれたりホットサンドを作ることもある。
江戸前天ぷらで
人気のタネ ギンポ
愛嬌たっぷりな
チチブの仲間
ボーダー柄がかわいい
アカオビシマハゼ
運がよければ網でも
すくえるイシガニ
「外道と呼ばれる魚たちは釣り人には敬遠されがち。そのせいか、釣れるポイントが空いているので、のびのびと釣りを楽しめるのも魅力なんです」。今回釣れた魚たちは、いずれもキャラの立った個性的な佇まい。透明の観察用アクリルケースがあれば、魚を弱らせずにじっくりと見て楽しむことができる。
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Text: Motohiro Sugiyama